Japanese Dragonflies. report from Yokohama, Fukuyama city.
日本のトンボ
「エゾトンボ、トンボの仲間」
Japanese Dragonflies "Anisoptera-2"
Japanese Dragonflies. report from Yokohama, Fukuyama city.
エゾトンボの仲間はあまり一般的ではありません。特定の時期に特定の場所に行けば出会えるようなトンボです。現在私が紹介できるのは2種のみですが、この2種は全国的に広く見られる種のようです。
広島県福山市
1024×682 px
2013/04/29
Nikon V1 Mode A
Nion AiAF ED 300mm F4s
トラフトンボは名前のまんま、黄色いトラ模様のとんぼです。ちなみにトラフは漢字で虎斑と書きます。トンボのトラ模様と言いますと、およそヤンマやサナエトンボの仲間に多い模様です。つまり、「しゅっとした姿」のトンボに多い印象ですが、トラフトンボはわりとずんぐりした姿のトンボなので、ヤンマ系との見分けは簡単かと思います。
私の撮影記録は過去福山で3年に渡って4回ありますが、4月27日~5月6日の間、つまりGWの頃に集中しています。写真を見る限り複眼の色目がグレー系なので、この時期だとまだふ化して間もない個体だったのだろうと思います。成熟すると綺麗な緑色になるようです。
「トラフトンボ ♀」 クリックで拡大します
広島県福山市
1024×682 px
2012/05/05
Nikon V1 Mode A
Nion AiAF ED 300mm F4s
トラフトンボのメスは羽の前縁に沿って黒い色が目立ちます。他のトンボではあまり見かけない羽模様ですね。
広島県福山市
1024×682 px
2015/08/01
Nikon D7100 Mode A
Tamron A011 150-600mm / F5.6-6.3
タカネトンボの”タカネ”は漢字で”高嶺”と書かれます。私が出会ったのも福山市の北の端に位置する中国山地入り口の山の上(標高400m弱)です。瀬戸内に近い福山のホームグラウンドの低山では見たことがないトンボでした。図鑑では平地にもいるとのことですが、やはり名前の通り、多少高めの山にいる確率が高いのかなと思います。
このタカネトンボは割と飛翔力が強いトンボなのか、しばらく待っても頭上を舞うばかりで草木で一服の静止撮影チャンスはありませんでした。当時使っていたTamronの望遠ズームでは、すばしっこいトンボの飛翔絵を撮るのは難しく、このようなボケボケの絵しか残せませんでしたので拡大写真はありません。超望遠だと画角が小さいため高速で飛ぶトンボは難易度が高すぎです。このときは190mmの焦点距離まで望遠を戻しても、この絵でやっとのことでした。。今なら多少飛翔絵に慣れてきたので、もう少しましな絵が撮れるかな?あまり自信はないけど、次に出会ったらせめてもう少し粘ってみようと思います。(この日はあまりに暑すぎて我慢できなかった。。)
トンボ科の仲間は赤トンボとシオカラトンボのように赤もしくは青のトンボが多く、体がふと短くて赤色や水色をしているトンボは、まずこのトンボ科の仲間だと思って間違いありません。水辺さえあれば街中でも普通に見られるトンボが多いので、一般人にもなじみ深いトンボたちだと思います。
とは言っても、赤トンボにもたくさんの種がいて、中にはハッチョウトンボのようにミニチュアみたいなトンボもいます。また高地にいかないと見られない種や、逆に海辺にしかいない種などもいます。赤トンボだけでなく、水色をしたトンボたちもかなりの種に分かれているので、このトンボ科の仲間はぱっと見に惑わされなず、思い込みで見逃すことがないように注意が必要です。
広島県福山市
1024×682 px
2013/08/04
Nikon D200 Mode A
Nion AiAF ED 300mm F4s
チョウトンボはその名の通りチョウのように大きな羽をもったトンボで、ひらひらと軽やかに飛ぶ美しいトンボです。またトンボの中では珍しく、構造色による青く光る羽を持っていて、夏の日差しの下で妖しい輝きを見せてくれます。
一番よく観察できる季節は正に”盛夏”の頃です。8月のお盆の時期に、自然の残った郊外の穏やかな水辺で探すのが良いと思います。この時期の観察は暑さで心が折れそうになりますが、チョウトンボを見るとなぜか心が涼やかに落ち着く気がします。
私のチョウトンボの記録は12回あって、全て平地で見ています。街の公園でも見ていますし、珍しく海辺でも2度ほど見ているので、比較的人の暮らしに近い場所で見られるトンボだと思います。
この個体は♂です。
「チョウトンボ ♂ その2」 クリックで拡大します
広島県福山市
1024×682 px
2013/08/04
Nikon D200 Mode A
Nion AiAF ED 300mm F4s
上の2枚を撮った場所は、砂留といわれる川の上流の堰でできた水溜まり周辺です。昔、土石流を防ぐために石を積んで堰止めを作った場所なのだそうで、そこの上流が小さな池のような淀み場になっています。しかし緩いながらも一応流れがある川なので、水質もよく、周辺はトンボの楽園のようになっています。
川の縁のカヤやスゲが生い茂っている場所はトンボの休憩場ですね。よく見るとイトトンボ類もたくさん隠れていたりします。生き物には何気ない自然が一番です。
「チョウトンボ ♂ 飛翔」 クリックで拡大します
広島県福山市
1024×682 px
2022/08/28
Nikon D500 Mode A
Tamron A011 150-600mm / F5.6-6.3
川の淀みで巡回飛翔していたチョウトンボにチャレンジしてみました。結果、飛んでいるチョウトンボは思ったよりずっと俊敏で、飛翔絵を撮るのは想像以上に難易度が高いと感じました。
「チョウトンボ ♀」 クリックで拡大します
広島県福山市
1024×682 px
2013/06/22
Nikon D200 Mode A
Nion AiAF ED 300mm F4s
あらためてチョウトンボの記録を探していると、なぜか皆 ♂ の記録ばかりでした。やっと見つけた貴重な ♀ の1枚ですが、ちょっと遠い絵なので特徴がわかりにくいでしょうか。分かりやすい違いでいうと、腹の先端が♂より太いままで終わっている感じです。それと、♀ は青みが少なくて、黒っぽい色が目立つ個体が多いようです。もしかすると無意識にきれいな青い羽を持った個体ばかり追いかけていて、結果的に地味目な ♀ の記録が少ないのかもしれません。
長野県下高井郡
1024×682 px
2019/07/30
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3
このトンボは長野県の高原で見つけました。その場でも「あまり見ないトンボだな」とは思いましたけれど、見た目が地味なのであまり追いかけたり他の個体を探すこともせず、適当に撮ってその場を去りました。
家に戻り図鑑で調べまてみますと、♀ の地味さに対して ♂ の方は腰が赤く目立ち、とても面白い彩りをした少し珍しめの種であることを知りました。しかしときは既に遅し。長野の高原や高山、亜高山の池は結構な範囲で色々と回っていますが、カオジロトンボは今のところこの写真を撮った一か所でしか見れていません。私が見たのは長野の中でも北部の亜高山でした。次また近くを通ることがあれば、是非 ♂ くんを本気で探したいと思っています。
「カオジロトンボ ♂」 クリックで拡大します
長野県下高井郡
1024×682 px
2023/07/15
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3
久々に群馬-長野県境方面に出かけました。今回の旅の主目的の一つは、前回見逃したカオジロトンボの ♂ を見つけることでした。カオジロトンボは黒い体に翅の付け根周辺のみが深紅に染まるという、高原にしかいない珍しめのトンボです。事前にマップで色々と調査・検索し、前回カオジロトンボ ♀ を見つけた場所からほど近い湿原に狙いを定めて散策しますと、狙い通りたくさんのカオジロトンボに出会うことができました。念願かなって ♂ も(というよりほぼ ♂ ばかり)たくさん観察することができたので、とても満足な一日となりました。
「カオジロトンボ ペア」 クリックで拡大します
長野県下高井郡
1024×682 px
2023/07/15
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3
一つ上の ♂ と同じ場所で見たカオジロトンボのペアです。
カオジロトンボは高原の湿原に棲む種です。北関東~甲信越で「高原の湿原」と呼ばれる場所はたくさんありますが、私がカオジロトンボを見たのはそのたくさんの湿原のうち2箇所のみで、その場所に共通していたのはモウセンゴケが生えていたことくらいでしょうか。そこは水質もよくて、今の時代ではかなり自然環境が守られた場所だと感じました。逆にカオジロトンボが住める場所も、今の日本には僅かしか残っていない、ということもわかりますね。
カオジロトンボの記録は3度ありますが、いずれも7月の間です。図鑑では6月後半から8月いっぱいまでとなっているので、真夏のみに見られる種のようです。また見られる場所も本州東北の高地と北海道の一部なので、見るためのハードルは結構高い種だと思います。
神奈川県横浜市
1024×682 px
2015/11/15
Nikon D7100 Mode A
Tamron A011 150-600mm / F5.6-6.3
本種は”ナツ”アカネという赤トンボです。日本ではいわゆる赤トンボの代表種としてアキアカネがいます。私の記録ではアキアカネ25回に対してナツアカネは2回のみですから数は少なめな印象です。名前に「夏」がついていますが、図鑑の発生時期を見る限りナツアカネもアキアカネも7月~12月に入るころまでが成虫の活動時期のようなので、本来見られる時期にはあまり差がないはずです。ただ、アキアカネの方は夏場は高地にいて平地で姿が増えるのは秋からとのことで、これが名前の理由のようですし、ナツアカネは早めに見られるからナツアカネなのだろうと思われます。
ナツアカネはアキアカネよりさらに真っ赤になる印象です。特に ♂ は成熟すると身体から顔まで真っ赤になります。
「ナツアカネ ♀ 秋の成熟体」 クリックで拡大します
神奈川県横浜市
1024×682 px
2015/11/15
Nikon D7100 Mode A
Tamron A011 150-600mm / F5.6-6.3
♀ は ♂ ほど赤くなりません。ただ一部の成熟個体は♀も腹部の背面が真っ赤に染まり、また羽の基部が橙になったりとアキアカネの♀よりはだいぶと派手になるようです。
「ナツアカネ ♀ 真夏の個体」 クリックで拡大します
岡山県新見市
1024×682 px
2015/8/9
Nikon D7100 Mode A
Tamron A011 150-600mm / F5.6-6.3
こちらは岡山県の北部で見た ♀ です。上で紹介した秋の個体ほど赤みが強くありません。この絵は胴の側面がよく見えるので注目してもらいたいのですが、足の上の胴の部分で下から3本黒い筋が上に伸びています。このうちの真ん中の一本が途中で止まっていますが、先端は平たく止まっています。これがナツアカネの特徴で、アキアカネはこの真ん中の黒い筋が尖がって止まります。羽で隠れると見えにくいので、なるべく横から観察することが同定の秘訣でしょうか。
「ナツアカネ ペア」 クリックで拡大します
神奈川県横浜市
1024×682 px
2015/11/15
Nikon D7100 Mode A
Tamron A011 150-600mm / F5.6-6.3
ナツアカネの紹介最後はペアの写真です。この絵は既に刈り取られた田んぼの横の用水路で撮りました。横浜市内では田んぼ自体が少ないので、自然とトンボも見かけにくくなっていますが、数は少なくても残ってくれているトンボや他の生き物たちを大事にしたいと思います。
ちなみにナツアカネの記録は2度しか持てていません。アキアカネよりはかなり出会いが少ない印象です。
広島県福山市
1024×682 px
2013/08/15
Nikon V1 Mode A
Nion AiAF ED 300mm F4s
トンボ科には翅の先端に褐色斑を持つ種がいくつかいます。この手のトンボで一番見る機会が多いのはノシメトンボでしょうか。今から紹介するリスアカネも翅先端に褐色班をもっている赤トンボですが、ノシメトンボよりかなり小型で、色目もより赤いので慣れれば違いはすぐにわかるようになると思います。ただ気を付けたいのは、もう一種コノシメトンボという種がいて、こちらは名前の通りノシメトンボより小さいため、リスアカネとよく見間違いします。秋が深くなるとコノシメトンボは胴や顔まで赤くなるので分かりやすくなりますが、若い個体などは写真に撮ってよく見比べないと、ぱっと見だけでは判別が中々難しいかもしれません。この2種は同じ時期に同じ場所に現れたりするのでよけいに分かりにくいですね。
山の中だけでなく街の公園などでも見かけますので、翅の先端が黒っぽく見えるトンボを見かけたらちょっと注目してみてください。
「リスアカネ ♂ 飛翔」 クリックで拡大します
静岡県富士宮市
1024×682 px
2024/08/13
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3
リスアカネ ♂ の飛翔写真です。こちらは既に成熟した個体ですが、胸と腹の黄色と赤がはっきりと分かれて見えるのが特徴です。コノシメトンボは胸も目も赤くなります。
「リスアカネ ♀」 クリックで拡大します
広島県福山市
1024×682 px
2013/10/06
Nikon V1 Mode A
Nion AiAF ED 300mm F4s
リスアカネの♀です。よく似たコノシメトンボの ♀ は腹の背中側がオレンジ色をしているので、見分けに使えます。
「リスアカネ ♀ 正面」 クリックで拡大します
広島県福山市
1024×682 px
2013/10/06
Nikon V1 Mode A
Nion AiAF ED 300mm F4s
一つ上のリスアカネの♀を正面から見た絵です。ちなみにコノシメトンボのメスには豚鼻状の黒い眉状斑があります。
「リスアカネ ♀ 飛翔」 クリックで拡大します
静岡県富士宮市
1024×682 px
2024/08/13
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3
リスアカネ ♀ の飛翔写真です。飛ぶと翅先端の褐色班がよく目立ちます。
「リスアカネ ペア」 クリックで拡大します
東京都
1024×682 px
2022/09/17
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR
都内の公園で撮ったリスアカネのペアです。この日は同所でコノシメトンボやマユタテアカネも同時に見られ、私の中ではちょっとした赤トンボ祭りでありました。「都内の公園も侮れないもんだ」とちょっと嬉しくなりました。
過去データを見るとリスアカネは8/1~10/14までの間で8回の記録がありました。回数的にもまずまずよく見られるポピュラーな種ではないかと思います。
広島県神石郡
1024×682 px
2003/09/15
Nikon D100 Mode A
Nion AiAF ED 300mm F4s
ノシメトンボと最初の出会いは2003年の秋、まだ小さかった子供たちを遊ばせるのに家族で広島県神石高原町の公園にでかけたときのことでした。子供がボール遊びしている横で、芝生で転がってのんびりしていた私の近くに、一匹のトンボが飛んできてくれました。暇つぶしにいい遊び相手だと、まずは子供を追うのに使っていた300mmの望遠で撮り、その後レンズをマクロ60mmに変えて、匍匐前進で近きながらパチリパチリと逃げられるまで撮り続けました。
当時は自身初のデジタル一眼レフであるD100を買って間もないころで、とりあえず銀塩時代に持て余していた親父の形見のNikkorレンズ群を色々と試していた頃です。
家に帰って撮ったトンボの絵をよく見ると、300mmの方はバックがきれいにボケていてトンボが浮き出ており、以後長くお気に入りの一枚となりました。その後トンボやチョウなどの昆虫類を撮り始めるきっかけとなった一枚でもあります。
D100は今となればたかだか600万画素のCCDカメラでしたが、出てくる絵の美しさは今の時代のカメラと比べても負けないくらいのものでした。今もノシメトンボを見るたびに、当時の思い出がよみがえります。
「ノシメトンボ ♀ 60mm Micro」 クリックで拡大します
広島県神石郡
800×533 px
2003/09/15
Nikon D100 Mode A
Ai AF Micro Nikkor f60mm F2.8S
上のトンボをマイクロ60mmで撮ったものです。顔の周辺だけをトリミングしてみました。これ以上大写しにするとトンボって結構グロく見えたりするので、ここらへんで止めておきます。300mmF4も60mm Microも1990年頃の銀塩時代のレンズですが、D100との相性はどちらもばっちりだったと思います。
「ノシメトンボ ♀」 クリックで拡大します
広島県庄原市
1024×682 px
2020/07/18
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3
こちらの絵を見ますと、顔に豚鼻状の眉斑があります。図鑑によるとこの眉斑はある個体とない個体があるらしいです。さて豚鼻があると、ノシメトンボの ♀ はぱっと見でマユタテアカネの ♀ と姿がよく似ているように思えます。しかし実際に両方を現場で何度か見てみれば、マユタテアカネはノシメトンボよりもずっと小さいため割と簡単にみ見分けができるようになります。
「ノシメトンボ ♂」 クリックで拡大します
広島県府中市
1024×682 px
2015/06/27
Nikon D7100 Mode A
Tamron A011 150-600mm / F5.6-6.3
これまで撮った自分のノシメトンボの記録を改めてみてみると、不思議とほぼ♀ばかりです。唯一 ♂ が記録されていた場面を見つけたところ、今度はなにか草みたいなものが前方に被っていたようで、白っぽくもやもやした写真です。
それでも♂の特徴が一番出やすい腹の部分だけはそれなりに写っているので、参考までに置いておきます。メスよりは腹が細くて黒色部が多いですね。
過去のデータで見ると6回の記録があって、時期は7/18~9/14まで。夏にやや涼しめの山の中で見る頻度が高いですが、同じ時期に平野の湿原で見たりもしているので、まずは普通に見られるトンボだと思います。
長野県松本市
1024×682 px
2020/09/19
Nikon V1 Mode A
1 NIKKOR VR 30-110mm f/3.8-5.6
私は毎年9月中旬になると松本市の山に上がってタカの渡りを観察しています。時期的にはまだ残暑の残る時期ですが、標高が1,700mを越えますと日が照ってもそこまで暑くはなく、既に秋の気配を感じさせられます。このトンボはイスに座ってタカがやってくるのを待っていたときに、かみさんのカバンに止まった小さめの赤トンボです。
ありふれた(♀系の)色をしたトンボでしたし、カバンやらイスやらしょぼい背景になるものばかりに止まってくれる個体であったため、こちらもあまり本気で撮る気になれませんでした。結局その日はずっとそんな感じでしたから、半ばあしらう感じで手持ちのV1で適当に撮ってあとは「もう終わり!」にしてしまいました。
ところが家に戻ってから調べてみると、高地や寒冷地にしかいないやや珍しめのムツアカネというトンボだったとわかりました。「せめて ♂ も探してもう少しまじめに撮っておくべきだった。。」とは、いつも通り「後の祭り」でありました。ちなみに名前の語源になる「陸奥=青森地方」では既に絶滅認定されていて、本州ではもう限られた場所でしか繁殖していない種のようです。
ムツアカネ ♀ の見分けに使う特徴は、腹の先の下部にみえる産卵管の突起です。この絵でも下の絵でも見えていますが、他の ♀ のトンボではこのように下に向かって盛り上がった突起は見たことがないので、そこに注目すれば見分けは簡単かもしれません。
「ムツアカネ ♀ 」 クリックで拡大します
長野県茅野市
1024×682 px
2024/09/06
Nikon D7100 Mode A
AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3
長野には上記の松本市以外にもムツアカネが好きそうな高地の湿原がたくさんあります。今回天気が良い日を狙って、まだ行ったことのない高原の湿地っぽい場所にある小さな池に出かけてみました。
予想は見事に当たって、たくさんのアキアカネに混じってぽつぽつとムツアカネがいるのを見つけました。今回こそ(3度目!)はきれいなバックで格好よく撮ろうと、周囲の葉っぱや枝にとまるムツアカネを探してみます。ところがそういう(絵になる)場所にいるのははなぜかアキアカネばかり。元々アキアカネとムツアカネの数は差があって、ざっと100:1くらい(ちょっと大げさかな?でも少なくとも10:1とかの比ではない)かも、みたいな感じです。「数が少ないから草木で見つからないのかな?」とか思ってよくよく観察していると、どうやらムツアカネにはアキアカネと違う習性があるらしいと気づきました。
その習性とは、地面が大好き(?)で低いところばかりに止まることです。ここに来て最初に見つけたのも側溝の縁の上でしたし、よくよく考えると前回の松本市でも、いすの手すりやカバンの上にしか止まってくれませんでした。あまり脚力がなくて、風に揺らされるのが不得手なのかな?
顔を見ると眉斑(私は豚鼻模様と呼ぶ)があります。♂ の方は顔全体が黒くなるので、そう言っていいのかは不明です。
「ムツアカネ ♀ 木道の上」 クリックで拡大します
長野県茅野市
1024×682 px
2024/09/06
Nikon D7100 Mode A
AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3
♀ が木道に留まったところです。陽射しが強かったので、少しトンボの色がつぶれ気味ですね。翅の特徴は透けて分かりやすいかと思います。ちなみに翅の基部が赤いのは ♀ のみで、♂ は全体的に透明な感じです。
木道に留まるのが好きなトンボといえばカオジロトンボもそんな感じでした。こちらも高原の湿地にいるトンボですね。何かしら理由があるのでしょうか。
「ムツアカネ ♂ 葉っぱの上」 クリックで拡大します
長野県茅野市
1024×682 px
2024/09/06
Nikon D7100 Mode A
AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3
かなり頑張って、なんとか葉っぱの上のムツアカネを見つけることができました。当日ではかなりレアなシチュエーションでした。
ムツアカネ ♂ は黒くなる赤トンボ(!?)です。最初は ♀ のような色から始まって、成熟したところでほぼ黒くなるとのこと。ただし、当日撮ったムツアカネの ♂ の絵は、いずれも黒色が少し飛んだような色になっていて、全体的に滲んだように露出過多みたいな写りの印象があります。というか、撮った記録を見返す前に、目視でもそんな感じで黒色が少し白っぽく感じる印象でした。他のトンボはまともにくっきりと見えるのに、むつトンボの ♂ だけが皆白っぽく見えるので、そのうち「何か変だな?」を感じるようになりました。後から撮った絵を大写しにして調べた結果、やっと理由がわかりました。ムツアカネの ♂ は身体全体が物凄く毛深いのです。。。しかもその毛が白っぽくて、特に肩の部分などは非常に長い毛で包まれいるため、まるでブラシみたいになっていることがわかります。
「ムツアカネ ♂ 黒い顔」 クリックで拡大します
長野県茅野市
1024×682 px
2024/09/06
Nikon D7100 Mode A
AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3
ムツアカネ ♂ は顔まで黒くなります。この絵ではわかりにくいかもしれませんが、実は顔(鼻先みたいな黒いところ)も長い毛でびっしり覆われています。
「ムツアカネ ♂ 若い個体」 クリックで拡大します
長野県茅野市
1024×682 px
2024/09/06
Nikon D7100 Mode A
AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3
ムツアカネ ♂ の若い個体です。まだところどころに黄色みが残っています。
この絵は繁殖地の池の岸部の泥地の上で撮っています。やはり腹の部分などが白っぽく見えますが、前述の通り腹にもびっしりと生えている短い毛が陽射しを受けて光っているのです。
ちなみにムツアカネの ♂ はこの濡れた地面が大好きです。空いている濡れた地面があれば、必ず一匹はそこに陣取っています。ただよほどよく見て探さないと、保護色のようになっていてトンボがいるようには見えません。「♂ が黒っぽい色をしているのはこういうところに意味があるのかな?」とか思った次第です。
「ムツアカネ ペア 産卵飛翔」 クリックで拡大します
長野県茅野市
1024×682 px
2024/09/06
Nikon D7100 Mode A
AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3
ムツアカネのペアの産卵シーンです。雌雄が連結したまま飛翔して、浅い水面に打ち付け産卵します。
見ているといずれもイネ科っぽい抽水植物の周辺の浅場で産卵していましたので、正に湿原に生きるトンボなんだなと感じました。
ここは冬になると完全に雪で埋まる場所なので、本種は卵のまま越冬するようです。雪が溶けるのは5月を過ぎてからだと思うので、卵からヤゴが孵って、更に9月には成虫となって空に上がるのですから、その間たぶん3か月程度しかないはず。。なんと忙しいトンボなんだと思いました。
「ムツアカネ ペア」 クリックで拡大します
長野県松本市
1024×682 px
2023/09/02
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3
ムツアカネのペアです。初観察から3年ぶりに長野へ再捜索に出て、無事「初 ♂」を見つけることができました。ムツアカネはトンボ科の種としてはかなり小さいくて、この観察時などは最初「イトトンボが飛んできたのか?」と思ったほどです。特に ♂ の腹が細いのでそのような印象があります。
ムツアカネの記録は3度あって、いずれも長野の高地でのものです。松本の観察地(池)にはこれまで10回近く訪れていますが、ムツアカネを見たのは1度だけ。なので見る機会はかなり少ない印象です。大抵低いところを飛んでいて、姿も小さいし地味目なので見つけること自体が難しめですね。
広島県福山市
1024×682 px
2015/08/09
Nikon D7100 Mode A
Tamron A011 150-600mm / F5.6-6.3
アキアカネは日本全国どこでも一番よく見られる”普通の”赤トンボです。「秋の夕暮れに頭上で乱舞する赤トンボ」をイメージされる種は、おそらくこのアキアカネだろうと思います。
成虫が見られる時期は梅雨時から冬までとかなり長いです。私の記録も7/14~12/9までとかなり長期間にわたります。一方で、どうやら渡りをする種らしく、夏場は涼しい高地で生活し、秋になって一挙に平地に降りてくるようです。確かに自分のアキアカネ・データをみても、7月~お盆前の記録は皆高原でのものばかり。平地での記録はお盆を過ぎたあとになっています。このように早い時期から生まれてはいるものの、実際に多くの人目に触れる(平地に降りてくる)のが秋以降であるため「アキアカネ」の名が付けられたようです。また夏場の ♂ はオレンジ色をしていて、秋になると背面が真っ赤に染まります。正に秋の「赤トンボ」を代表する種ですね。
アキアカネ ♀」 クリックで拡大します
神奈川県横浜市
1024×682 px
2023/10/01
Nikon D500 Mode A
AiAF Micro Nikkor 105mm F2.8S
Kenko N-AF 1.4X TELEPLUS PRO 300
秋のアキアカネ ♀ です。
自転車で近所の里山公園までおきらく散歩にでかけてみました。このとき虫用レンズのPf300mm/f4.0が入院中だったため、久しぶりに105mm Microを持ち出してみました。(1990年頃の製品)105mmだけだとかなり近づかないと大きく写せないので、1.4xテレコンも付けています。Microレンズなのでどこまででも寄れますが、散歩写真では大写しの前に逃げられてしまうことがほとんどで、結局サンヨンを使ったのと記録のサイズ感は変わりないかもしれません。そもそも古いレンズだし、テレコンを付けた影響もあるかもしれず、絵にもシャープさはそれほど感じられませんでした。でもボケ自体はきれいな感じです。
ちなみに手の持った重量はPfサンヨンの方が軽いかも。。「しっかりした造りで、ずっしりと重厚感がある」といえば聞こえはよいですが。
もう一つあるある。私はニコンレンズ持ちなので、世間一般で言う「マクロレンズ」の英語呼称はMicroレンズとなります。一方Canonさんなど他社は皆Macroレンズと呼ぶのですね。どっちが正解なのかはよくわかっていませんが、国内メーカーは皆グローバル展開された会社なのでどちらも間違いではないのだと思います。
アキアカネ ♀」 クリックで拡大します
長野県茅野市
1024×682 px
2024/09/06
Nikon D7100 Mode A
AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3
秋のアキアカネ ♀ をもう一枚。きれいに成熟した赤色がきれいな ♀ の個体です。
こちらはpfサンヨンと純正1.4xで撮った絵です。
当たり前ですが、上の絵と比べるとやはり解像感が段違いに優れています。30年からの時代の差を感じます。ただ両社は本来得意とする距離感が違うので、この距離の絵だけで評価するのはあまりフェアでないかもですね。
「アキアカネ ♂ 未成熟」 クリックで拡大します
栃木県日光市
1024×682 px
2017/07/15
Nikon V1 Mode A
AI AF VR Zoom-Nikkor 80-400mm f/4.5-5.6D ED
この絵は2017年7月15日に日光市の標高1,200mにある高原で撮ったものです。まだ背が赤くなっていない未成熟の個体です。胴にある三本の黒筋のうち、真ん中のラインが真ん中あたりで止まっており、この黒筋先端がとがって見えるのがアキアカネの特徴です。よく似た ナツアカネはこの真ん中の黒筋先端が平たくなって止まります。
足元のオレンジ色の花はニッコウキスゲです。
「アキアカネ ♀ 未成熟」 クリックで拡大します
栃木県日光市
1024×682 px
2017/07/15
Nikon V1 Mode A
AI AF VR Zoom-Nikkor 80-400mm f/4.5-5.6D ED
上で紹介した ♂ と同じ日、同じ場所で撮った ♀ の写真です。アキアカネは1年で生涯を終えるらしいのですが、7月はまだふ化後の早い時期だと思われます。この時期は ♂ も ♀ もまだ未成熟なため全体的に優しいオレンジ色をしていて、腹の形状くらいしか見分けできる場所がありません。
「アキアカネ ペア」 クリックで拡大します
長野県松本市
900×300 px
2023/09/16
Nikon D7100 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3
初秋の高原で撮ったペアです。アキアカネは秋に低地に下りると聞きますが、こちらは初秋に高地で産卵の準備をしているので、一生を高地で過ごす個体もいるのでしょうね。
絵はゴーヨン+1.4xで撮っています。ゴーヨンで撮った水辺のバックはさすがにボケがきれいです。
「アキアカネ ♂ 背景 緑・青」 クリックで拡大します
長野県松本市
1024×682 px
2020/09/20
Nikon D7100 Mode A
AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3
こちらは9月半ばに標高1,500mの高原で撮った絵です。池の縁で撮りました。見る角度をわずかに変えただけで、片方は水草をバックに緑の絵、もう片方は水面をバックに青い絵となりました。面白い対比になったので2枚をまとめて紹介させていただきます。
東京都
1024×682 px
2022/09/17
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3
コノシメトンボは名前の通りノシメトンボを小型にしたようなトンボです。しかしノシメトンボの仲間ではなく後に紹介するマユタテアカネに近い種となります。
コノシメトンボはノシメトンボと同じく翅端に黒斑があります。ただノシメトンボよりはサイズ的に一回り小さいので、慣れれば見分けはつくかとます。一方ノシメトンボの仲間にリスアカネという種がいて、こちらも翅端に黒斑があり、さらにサイズもコノシメトンボとよく似ています。コノシメトンボの方が成熟個体になったときの赤化が強くなるので、秋も深まれば判別しやすいですが、未成熟のうちはどちらもにたような黄橙色ですので、よく写真に撮って見比べないと見分けは難しいかもしれません。
この ♂ は秋の個体なのでしっかりと成熟しており、胸から顔まで真っ赤です。ここまで赤くて黒斑を持つトンボは他にみないので、コノシメトンボ ♂ だとすぐにわかります。
「コノシメトンボ ♂ 正面」 クリックで拡大します
広島県福山市
1024×682 px
2012/10/07
Nikon V1 Mode A
Nion AiAF ED 300mm F4s
コノシメトンボ ♂ の顔がわかる絵です。顔も胸も真っ赤です。
「コノシメトンボ ♂ 飛翔」 クリックで拡大します
長野県松本市
1024×682 px
2023/09/16
Nikon D7100 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3
高原の池でイワツバメの水飲みを撮ろうと置きピンでシャッターを切っていたら、空振りした絵にコノシメトンボが写っていました。かなり遠くでしたが、100%まで拡大するとはっきりとコノシメトンボの ♂ だと分かります。この絵はバランスを撮って50%くらいに拡大してトリミングした絵です。いつかもう少し大きい絵を撮って差し替えられるようにしたいですね。
「コノシメトンボ ♀」 クリックで拡大します
東京都
1024×682 px
2022/09/17
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3
初秋に東京都内の公園でみつけたコノシメトンボの ♀ です。同日同場所でマユタテアカネも観察しています。マユタテアカネの ♀ には翅先端の黒斑をもつ個体もいるので、見極めは慎重にならないといけません。判別の難易度はかなり高いと思います。二種間では実際に種間交配の記録もあるそうなので、そうなるとお手上げですが。。
「コノシメトンボ ♀ 正面」 クリックで拡大します
東京都
1024×682 px
2022/09/17
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3
一つ上と同じ個体を正面からみたところ。顔に豚鼻状の眉斑があります。このあたりは次で紹介するマユタテアカネに似ていますね。
本種に関し、図鑑では7月から12月初旬まで見られるとあります。私の場合は秋に偏っていて、9/16~10/27までの間で6回の写真記録がありました。福山でも関東地方の平地や長野の高原でも見ているので、割と広く見られるトンボなのだろうと思います。一般的には赤いトンボは皆赤トンボで終わりますが、本種は翅先端の黒斑がよく目立つので、「また赤トンボか」で終わらせず、少し目を凝らして見てもらえば新しい発見があるかもしれません。
長野県松本市
1024×682 px
2023/09/02
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3
乗鞍方面の湿地にでかけたときのこと。池のほとりで小さな赤トンボを見つけました。アキアカネよりは二回りくらい小さい真っ赤なトンボです。しかしもともと思い込みの強い私ですから、この日も「またマユタテですか」と適当に撮っておしまいにしていました。しかもこの日はカメラの露出設定をミスっていたために、家で確認した記録絵は全体的に滲んでしまっており、詳しく見る気にもなりませんでした。「絵は果てしなくゴミに近いけれど、とりあえず2-3枚はカウント記録用に残しておこう」でお蔵入りとなりました。
これがヒメアカネだと気づいたのは、それから2W後に同じ場所にもう一度出かけて眉斑がないメスを正面からしっかり観察できたことに始まります。「そういえば前回マユタテいなかったっけ?」とゴミあさり。。いえ、記録の見直しを行いました。結果、ゴミだからと記録を捨てずにおいてよかった!とホッとした次第。絵としてはゴミみたいなものでも、何とかヒメアカネ ♂ の特徴は見てとれます。1.腹先端の付属器が反りあがっていない。腹下側の黒色が目立つ。の2点はマユタテアカネにはないヒメアカネの特徴です。
「ヒメアカネ ♀ 斜め前」 クリックで拡大します
長野県松本市
1024×682 px
2023/09/16
Nikon D7100 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3
前回9月2日この観察場所に出かけたときは露出補正をフルにマイナスにかけたまま全ての写真を撮って大失敗していました。その日の失敗が悔しくて、2W後に同じ場所に再チャレンジにでかけましたところ、前回から100mほど離れた場所で眉のないマユタテっぽい小さな赤トンボを見つけました。小さなマユタテよりさらに一回り小さいトンボですので、今回は「マユタテではなさそうな」と気づき、3方からじっくりと観察して記録を残しました。
思った通りこの小さな赤トンボはマユタテアカネの近縁種であるヒメアカネと分かりました。決め手はやはり顔に豚鼻模様がない(小さいのはありますが)ことです。それ以外でも腹の黒色模様や、産卵弁の長さなどがマユタテアカネと差があって、ヒメアカネだろうと判断しました。またその後前述の ♂ の絵を見直して、こちらもヒメアカネの特徴があることから、雌雄共に同一場所で確認することができました。
「ヒメアカネ ♀ 正面」 クリックで拡大します
長野県松本市
900×300 px
2023/09/16
Nikon D7100 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3
ヒメアカネの顔がよく分かる正面からの絵です。点のような鼻がありますが、マユタテアカネの大きな豚鼻模様とは違って上品な感じです。
「ヒメアカネ ♀ 側面」 クリックで拡大します
長野県松本市
1024×682 px
2023/09/16
Nikon D7100 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3
ヒメアカネ ♀ の産卵弁はマユタテアカネより長いとのこと。図鑑で見ると上の付属器より産卵弁の方が長く突き出ているようですが、この個体はそこまでは長くありません。ただ私の持っているマユタテアカネの ♀ の絵よりははっきりと長いので、やはりマユタテでなくヒメアカネなのだろうと思います。もう一点マユタテアカネの ♀ は腹の色が少し濁った色目ですが、ヒメアカネは明るい黄色が基調となっていて模様も微妙に違います。
私のヒメアカネの記録は長野県の松本市での2回のみ。いずれも9月の観察です。高原の湿地帯で見ています。
広島県福山市
1024×682 px
2012/10/13
Nikon V1 Mode A
Nion AiAF ED 300mm F4s
マユタテアカネはコノシメトンボに近い種の小型の赤トンボです。名前の「マユタテ」は漢字で書くと「眉立」で、顔面にある眉状斑から来ていることがわかります。
「マユタテ」と表現すれば聞こえはよいのですが、私的にはマユタテアカネの顔は「豚鼻状斑」としか見えません。少なくとも目より下にあるのに、眉と表現するのは無理があるのでは。。と。ちなみに「眉状斑」は ♂ ♀ ともにあります。
マユタテアカネは梅雨のころから冬が始まる頃まで見られ、観察の機会はかなり多い方だと思います。私自身では7/7~10/27の間で22回記録があります。この数はシオカラトンボやアキアカネの次に多いので、かなりポピュラーな種だと感じています。ただアキアカネのように大群で群れることはなくポツンとしていることが多いので、「よく見はするが数はそれほどでもない」という印象でしょうか。
「マユタテアカネ ♂ その2」 クリックで拡大します
東京都
1024×682 px
2022/09/17
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3
こちらは都内の公園で撮った ♂ です。腹はきれいな真っ赤というか濃い朱色になって鮮やかですが、胴の部分はコノシメトンボほど赤くなりません。
「マユタテアカネ ♂ 正面」 クリックで拡大します
神奈川県横浜市
1024×682 px
2023/10/01
Nikon D500 Mode A
AiAF Micro Nikkor 105mm F2.8S
Kenko N-AF 1.4X TELEPLUS PRO 300
マユタテアカネの眉がよく分かる正面からの絵です。私には豚鼻にしか。。
この絵は家の近くの里山公園で撮っています。種が少なめな地元でも見られる、ありがたいトンボです。
「マユタテアカネ ♀」 クリックで拡大します
広島県福山市
1024×682 px
2012/08/18
Nikon V1 Mode A
Nion AiAF ED 300mm F4s
マユタテアカネの♀はたまに翅端に黒斑が出る個体がいるそうです。残念ながら私はそのような個体にはまだ出会ったことがなく、見るのはいつもこの絵のような透明の翅の個体のみです。そして、近縁の コノシメトンボの♀は前述の眉状斑があるものですから、両者の間ではよけいに紛らわしいことになります。彼女たちの見分け方としては、「胴の横の黒い筋がマユタテアカネでは非常に細くて目立たず、コノシメトンボは太い」あたりでしょうか。ただトンボ科のトンボは翅をやや前傾に倒して休むことが多いため、胴の部分は翅で隠されていることが多くてなかなか分かりにくいですね。やはり大部分のマユタテアカネの♀は翅端の黒斑はないので、まずはその前提で見分けするのが良いのではと思います。
「マユタテアカネ ♂ 未成熟個体」 クリックで拡大します
広島県福山市
1024×682 px
2013/07/07
Nikon V1 Mode A
Nion AiAF ED 300mm F4s
おそらくヤゴからふ化して間もないころのマユタテアカネ ♂ です。この時期の赤トンボはまだ皆が黄色をしていますので、見分けが難しいと思います。私がこの個体をマユタテアカネだと同定した一番のポイントは、オスの尾部先端付属器が強く上に反りあがっている点です。他に胴の横の縞が細くて薄い点も合わせての同定でしょうか。
「マユタテアカネ ♀ 未成熟個体」 クリックで拡大します
広島県福山市
1024×682 px
2013/07/07
Nikon V1 Mode A
Nion AiAF ED 300mm F4s
上の ♂ 個体と同じ日に撮った ♀ の記録絵です。この絵では見えていませんが、若い個体でも豚鼻斑はしっかり見えています。なので、ここさえ見れれば全体の色目がまだ薄くても他の種との同定に使えると思います。
広島県府中市
1024×682 px
2007/10/13
Nikon V1 Mode A
Nion AiAF ED 300mm F4s
ミヤマアカネは翅の先端より手前部分に幅広く黒斑を持つ赤トンボです。赤トンボでこのような翅模様をしている種は他にないので、まず見間違いはありません。
図鑑によると全国的に生息する種だとのことですが、私はあまり観察の機会がなく、過去3度のみの記録です。
「ミヤマアカネ ♂ 上面」 クリックで拡大します
埼玉県秩父郡
1024×682 px
2017/11/23
Nikon D200 Mode A
Nion DX Zoom 18-55mm/F3.5-5.6G II ED
こちらは観光地の河原でたまたま見つけたミヤマアカネの記録です。足元に飛んできてくれたのを風景用の標準ズームレンズで撮っています。スマホの記録とあまり変わりない出来栄えですがお許しを。
「ミヤマアカネ ♀ 未成熟」 クリックで拡大します
長野県松本市
1024×682 px
2023/09/02
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3
ムツアカネを探しに行った高地湿原で見つけたミヤマアカネの未成熟個体です。縁紋が白いのと、色目が柔らかい薄茶色をしているので、まだ生まれて間もないのだろうと思われます。周囲を見たところ、似たような色目をした個体が複数見られたので、ミヤマアカネの本格的な時期はもう少し後なのだろうなと思います。ちなみにその2W後に同所を再び訪れたときは既に一匹も見当たりませんでした。すぐに遠くへ移動したのでしょうか。そうだとすれば、産卵時はまた高原に戻ってくるのでしょうか?;
同じく若い個体を高原で見るアキアカネなどは、平地で生まれてすぐに集団で高原に登ってくるのかな?と思っていましたが、ミヤマアカネはどう見てもここ(高原)で羽化したてに見えましたから、このあとどうなるのかが謎ですね。。
広島県福山市
1024×682 px
2012/10/13
Nikon V1 Mode A
Nion AiAF ED 300mm F4s
ネキトンボは赤トンボの中でもかなり真っ赤度が高めのトンボです。成熟した ♂ は顔、胴、腹の全てが赤くなり、さらに羽の基部まで朱色に染まります。名前を漢字で書けば根黄蜻蛉ですから、やはり翅の朱色が決めてなのでしょう。サイズも中の大くらいでがっしりした印象です。
生息地は暖かい地方に多いようで、観察したい場合は東北地方より南で探すのが良いようです。私は福山時代も横浜時代もどちらの一帯でも観察で来ています。ただ赤トンボの中ではわりと出会いは少なめな気がします。私の記録では7/20~10/14まで7回の記録ありますが、6/7は9~10月の記録なので秋のトンボな印象があります。
「ネキトンボ ♂ 正面」 クリックで拡大します
山梨県南巨摩郡
1024×682 px
2022/10/01
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR
秋に南アルプスの麓方面にでかけたときに渓流の横で見つけました。近くに池もあったのでどちらで育ったのかは定かではありません。
「ネキトンボ ♂ 飛翔」 クリックで拡大します
東京都
1024×682 px
2022/09/17
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3
都内の公園でチョウトンボを撮っていたら、偶然画面に入っていました。ネキトンボは翅の基部のオレンジ色部分が派手なので、飛んでいる方が分かりやすいかもしれません。
「ネキトンボ ♀ 飛翔」 拡大画像はありません
広島県福山市
450×300 px
2022/08/28
Nikon D500 Mode A
Tamron A011 150-600mm / F5.6-6.3
こちらは頑張って飛翔を追っかけた絵です。が、うまく行きませんでした。。かろうじてネキトンボの♀であることがわかるので参考までに貼っておきます。拡大はありません。上の ♂ 画像でもそうですが、こんなぶれぶれ写真でもネキトンボの ♀ だとわかるあたりはとてもありがたいトンボだと思います。
長野県松本市
1024×682 px
2023/09/16
Nikon D7100 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3
キトンボは身体だけでなく翅や足まで全身オレンジ色をしたよく目立つトンボです。
私の記録は福井県敦賀市の湿地と長野県松本市の高原にある池での2度だけ。長野では池の真ん中あたりで見つけたので、あまり詳細が見える絵はありませんが、それでも「あ、これは絶対キトンボだ」とわかるものでした。
ちなみに私は普段トンボを撮るときはPfサンヨンに1.4xテレコンを付けて使っていますが、この日バイクから降ろしたサンヨンレンズが故障していることに気づき、急遽ゴーヨンを担いで歩く羽目に。で、「トンボ専用に撮るなら1.4xを付ける方が大きく撮れてお得だろう」と4年ぶりくらいでゴーヨン+1.4xの装備を使ってみました。結果、近い絵はサンヨンよりきれいなボケが得られ、遠くのトンボもそれなりにキャッチできるので「たまにはゴーヨンでトンボ撮るのもいいな」と感じた次第。この絵はその恩恵で撮れた一枚です。サンヨンだったらまっ黄色な塊にしか撮れなかった気がします。
思い返すとサンヨンレンズの故障はバイクの振動だった可能性が高く、それを考えると高価なゴーヨンを安易にバイクに乗せるのもリスクを感じるところです。とはいえ、冬の鳥の時期には必然的にバイク+ゴーヨンもあるので、今後はより厳重にクッションを利かせて安全確保して行こうと思います。ただゴーヨンは機動性が悪いですし、散歩しながらトンボを探すスタイルには向いていません。とりあえずはサンヨンを修理に出して、今後の普段使いはTamron A011に戻すのも手かと思っています。
神奈川県横浜市
1024×682 px
2017/07/17
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR
AF-S TC-14E III TC14E3
コシアキトンボは腰のあたりだけ白くてあとは全体が黒っぽい姿をした非常に分かりやすいトンボです。サイズは「シオカラトンボよりやや小さいかな?」くらいで、私は梅雨の時期に池のふちで見ることが多いです。
福山でも見ていますし、横浜でも見ていますので、平地で普通に見られるトンボだと思います。私の記録は8回あり、6/9~7/23の間に集中していて、それ以降は見た記憶もありません。図鑑では9月まで見られるように書かれていますが、南の離島でも見られるようなので、地域的なものもあるのでしょうか。
「コシアキトンボ ♂ 上面」 クリックで拡大します
岡山県井原市
1024×682 px
2013/06/22
Nikon V1 Mode A
Nion AiAF ED 300mm F4s
コシアキトンボは分かりやすい姿なので、草に止まっていても見つけやすいですね。♂ は翅端にわずかに黒斑が現れることがあるようです。
「コシアキトンボ ♂ 未成熟個体」 クリックで拡大します
広島県福山市
1024×682 px
2013/06/09
Nikon V1 Mode A
Nion AiAF ED 300mm F4s
羽化間もないころのコシアキトンボは、♂もメスも腰の色が黄色をしています。やがて成熟するにしたがって白い腰に代わります。私の記録では6月も後半になると白くなってくるようです。(中国地方などの平地での記録)
「コシアキトンボ ♀ 未成熟個体」 クリックで拡大します
広島県福山市
1024×682 px
2013/06/16
Nikon V1 Mode A
Nion AiAF ED 300mm F4s
♀ の未成熟個体です。♂ よりは腹がやや太いです。また ♀ はノシメトンボのように翅端に黒斑が出る個体が多いそうです。
広島県三次市
450×300 px
2015/76/26
Nikon D7100 Mode A
Tamron A011 150-600mm / F5.6-6.3
コフキトンボはシオカラトンボととてもよく似ている青色系の中型のトンボです。実は私、この個体を撮ってから8年の間、ずっとシオカラトンボの記録だと思い違いをしていました。今回シオカラトンボを見直す作業をしているうちに、この記録に差し掛かったところで偶然違和感を感じ取ることができました。まずは「♀ の胴模様がなんか変だぞ?」と気づき、次に同じ時刻に撮った ♂ 画像の眼も「シオカラトンボより眼が黒っぽい、でもオオシオカラトンボとは腹の色形が明らかに違う」となりまして、あらためて図鑑を見直すうちにやっと「これはコフキトンボだ!」と理解した次第です。
色々調べてみると、コフキトンボは少し猫背な姿勢を取ることが多いようです。絵を見ても確かに腰のあたりが少し折れ曲がっています。
残念ながら絵がピンボケだったので拡大はありません。たぶんシオカラトンボだと思ってあまり本気で撮っていなかったのだと思われます。反省。
「コフキトンボ ♀」 クリックで拡大します
広島県三次市
450×300 px
2015/7/26
Nikon D7100 Mode A
Tamron A011 150-600mm / F5.6-6.3
コフキトンボの ♀ はよく見ると細かな毛で全体が覆われていることがわかります。ここまで毛深いトンボは珍しいかもしれません。
「コフキトンボ ♀ 正面」 クリックで拡大します
広島県三次市
450×300 px
2015/7/26
Nikon D7100 Mode A
Tamron A011 150-600mm / F5.6-6.3
コフキトンボはシオカラトンボと違って、草木に止まったときに翅がやや上向きに(前から見るとV字に)持ち上がるのだそうです。ちなみにシオカラトンボはやや前傾に翅を倒します。シオカラトンボはこのとき横から見ると顔が見えなくなることが多いのですが、コフキトンボは横から見ても顔も胴もよく見えて分かりやすいです。
自分のコフキトンボの記録はこのときの一度のみです。ただシオカラトンボだと思って、あえて(見ただけで)撮らないまま素通りしている可能性もある気がしています。
岡山県新見市
1024×682 px
2015/8/9
Nikon D7100 Mode A
Tamron A011 150-600mm / F5.6-6.3
ハッチョウトンボは日本産トンボ類の中で最も小さなトンボです。サイズ的には長さ20mm、羽の幅30mm程度ですから上から見てもペットボトルのフタサイズで、イトトンボより小さいトンボです。
以前私が住んでいた福山近辺でも産地は限られていて、知られた場所にプチ遠征しないと見られない種でした。そして残念ながら関東地方ではほぼ全域で姿が見られなくなっているようです。次の絵で紹介するハッチョウトンボは群馬県とはいえ北部県境の亜高山でしたので、やはり関東の近場でハッチョウトンボを見るのはかなり難しそうです。
「ハッチョウトンボ ♂ その2」 クリックで拡大します
群馬県利根郡
1024×682 px
2023/7/16
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3
姿が小さいハッチョウトンボですが、♂ に関しては赤色が非常に濃く目立つ上に、大抵は足元の草で休んいるため、見つけるのは比較的簡単です。
「ハッチョウトンボ ♀」 クリックで拡大します
群馬県利根郡
1024×682 px
2023/7/16
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3
岡山で初めて見た八チョウトンボは時期も終わりかけていたのか、かろうじて ♂ を一匹だけ観察するに終わりました。そして今回の群馬は2度目の出会いで、数もたくさん見れて ♀ も初めて観察することができました。♀ はオスと違って全体的に黄色っぽい枯れた色をしているからなのか、♂ に比べて見つけるのが非常に困難だと感じました。実際、最初に ♂ のハッチョウトンボを見つけたあと、それから数十という数の ♂ を見つけたにも関わらず、その間♀ は一匹も見つかりませんでした。それからもこの観察地での往路は ♂ のみで終わりましたので、ややあきらめ気分で復路を歩いて戻っていたところ、帰り道後半を過ぎてやっと一匹の ♀ を見つけることができました。最終的には観察路コースから外れた場所でも偶然一匹を見つけることができましたが、この日の ♀ は結局計2匹の発見だけで終わっています。
このように中々 ♀ が見つからなかった原因について、実際の理由としては、1.「そもそも♀ の絶対数が少ない」のか、2.「色目から保護色になって見つけにくい」のか。私が感じた印象ではおそらく両方が理由ではないかと感じています。この日観察した感じでは、♂ 20匹に対して ♀ 1匹くらいの発見比率だったと思います。(もちろん私の探し方が下手なだけだった可能性も高いです。。)
「ハッチョウトンボ ♀ 指と比べて」 拡大はなしです
群馬県利根郡
1024×682 px
2023/7/16
iphone 13
ハッチョウトンボはこの通り大変小さいトンボです。一緒に写っているのは私の人差し指ですが、爪の長さはおよそ15mmです。ハッチョウトンボの体長は頭から尾の先までおよそ20mmと聞きます。実際こうやってみるとおよそトンボとは思えず、色目とサイズからしてほぼハチかアブにしか見えませんね。
この写真はカミさんのiphoneで撮ってもらいまいた。こういうシチュエーションですと、的が小さいのでピント合わせが中々うまく合わないものですね。私もイトトンボをiphoneで撮ろうとして毎度失敗しています。。
広島県福山市
1024×682 px
2013/06/22
Nikon D200 Mode A
Nion AiAF ED 300mm F4s
「ショウジョウトンボ」は漢字で書くと「猩々蜻蛉」です。この「ショウジョウ=猩々」とは古の猿の妖怪のことで、日本の生物界では赤い動物を象徴するネーミングとしてよく使われています。私の鳥のページで紹介する北米産のカージナルという全身真っ赤な鳥も、日本名は「ショウジョウコウカンチョウ」と呼ばれます。ちなみにこの鳥はアメリカのセントルイスカージナルスのチーム名の語源であり、チームのマスコットモデルでもあります。
名前の通り数ある赤トンボの中でも「ジ・赤!」なトンボです。足まで真っ赤なトンボはこのトンボくらいです。
「ショウジョウトンボ ♂ 正面」 クリックで拡大します
岡山県笠岡市
1024×682 px
2022/08/21
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3
正面から見ると、顔も見事なまでに真っ赤です。また羽の付け根回りも紅に染まります。
「ショウジョウトンボ ♀」 クリックで拡大します
岡山県笠岡市
1024×682 px
2022/08/21
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3
ショウジョウトンボの♀は成熟しても赤くならず黄色いままです。ぱっと見、色目がウスバキトンボと非常によく似ているため紛らわしいですが、ショウジョウトンボは ♂ も ♀ も腹の先端にある付属器という2本の角状突起が白色っぽくて、一方ウスバキトンボは黒いのでここで見分けが可能です。
ショウジョウトンボの記録は16度あり、特に平地でよく見かける印象です。横浜市内の公園でも普通に見られます。期間は5/25~11/12とかなり長期間で観察していますが、もっとも見る頻度が高いのは梅雨時期から8月一杯の暑い時期です。
広島県三次市
1024×682 px
2015/09/23
Nikon D7100 Mode A
Tamron A011 150-600mm / F5.6-6.3
ウスバキトンボはトンボでは珍しく渡りをする種だそうです。主に夏から秋に見かけるトンボですが、日本では南の島でしか繁殖記録がないとのこと。
♂ も ♀ も、夏も秋も、皆がいつも薄黄色をしていて、あまり目立たないトンボです。総じて地味な印象です。また腹先端の付属器の形状が雌雄共によく似ているため、雌雄の判別が非常に難しいトンボです。私などはずっと「自分が見るウスバキトンボはいつも ♀ ばかりだ!」とすっかり思い込んでいました。よく見ると腹のくびれ具合や付属器の長さが微妙に違っていたりします。ただ、これも「微妙に」な違いなので、正直まだ雌雄判別にはあまり自信が持てていません。ここで紹介する各絵の雌雄判別に対する自信のほどは55%くらいとかなり不安な領域です。あしからず。
「ウスバキトンボ ♂ 上面」 クリックで拡大します
広島県三次市
1024×682 px
2015/09/23
Nikon D7100 Mode A
Tamron A011 150-600mm / F5.6-6.3
上面から見ると、翅のアスペクト比がかなり横長に見えます。海を渡る渡りをするくらいなので、これくらい翅が大きい=飛翔力が強いということなのでしょうか。
「ウスバキトンボ ♀ フェリーのデッキにて」 クリックで拡大します
五島列島フェリー航路にて
1024×682 px
2015/08/14
Nikon D7100 Mode A
Tamron A011 150-600mm / F5.6-6.3
五島列島の福江島から佐世保に戻るフェリーのデッキで見つけたウスバキトンボです。残念ながらこのトンボはこのあとしばらくして息絶えてしまいました。南の島から来たのか、はたまた大陸からだったのかはわかりませんが、たぶん頑張って移動している途中だったんだろうな、と、「渡りをするトンボ」を実感した印象的な出会いでした。
「ウスバキトンボ ♀ 苫小牧」 クリックで拡大します
北海道苫小牧市
1024×682 px
2024/07/01
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3
北海道旅行で寄った苫小牧の森林公園で見つけたウスバキトンボです。
ウスバキトンボは日本に海外から飛来するトンボで、国内も一部繁殖があるらしいですが南国の島でしか繁殖しておらず、本州以北で見る個体は皆長距離移動してきた個体なのだそうです。ここ苫小牧でしかも7月に見たということは、かなり早い時期から長距離を飛んできたということなのだと思います。寒い地域ではヤゴが年を越せないので、これ以上北上してももう命のリレーはできないはずですけれど、種としては常に生息範囲を広げようと、世界中に広く飛散しているのだろうと思います。
ちなみにウスバキトンボの記録は6度あり、7/1~10/13までの期間です。一番早い時期にみたのが苫小牧というのも驚きですが、それだけ飛翔力、しいては生命力が強い種なのだろうことは想像できますね。場所も長崎県五島列島から北海道の苫小牧まで、長い時間、広い地域で見ています。
広島県三次市
1024×682 px
2014/06/01
Nikon D200 Mode A
Tamron A011 150-600mm / F5.6-6.3
ハラビロトンボは名前の通りに腹が横に太短い姿をしたトンボです。こちらの個体の腹は先端まで全体に青い色をしていますが、個体によっては先端から節が二つほど黒くなっているものもいますので、この場合はシオカラトンボと見間違いしやすくなります。
かなり特徴的な姿をしているので、しっかり体形を観察することで初めて見る方でも判別は可能と思います。
図鑑では日本に広く分布すると書かれていますが、私は今まで三度しか観察機会を持てていません。一度は中国地方の山の中の湿地帯。一度は信越の山深い里山近辺、もう一ヶ所は高原の湿原ですので、どういう場所が探しどころなのか未だによく分かっていません。
「ハラビロトンボ ♂ 側面」 クリックで拡大します
静岡県富士宮市
1024×682 px
2024/08/13
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3
横から見ると腹が太いのかよくわかりません。しかし、胴と目や鼻先(前額)が黒くてあご周りのみが白いあたりをよく見れば、シオカラトンボとの判別ができると思います。オオシオカラトンボはもっと大きくて、翅の基部が黒くて先端の一部も黒斑が出るため、そちらを見る方が判別しやすいと思います。
「ハラビロトンボ ♀ 上面」 クリックで拡大します
広島県三次市
1024×682 px
2014/06/01
Nikon D200 Mode A
Tamron A011 150-600mm / F5.6-6.3
ハラビロトンボのメスは黄色と黒の太短い腹をしているので、大きなハチと見間違うような姿をしています。もしかしたらハチを擬態して天敵から襲われにくくしているとか、そんな意味があるのでしょうか?
「ハラビロトンボ ♀ やや側面」 クリックで拡大します
広島県三次市
1024×682 px
2014/06/01
Nikon D200 Mode A
Tamron A011 150-600mm / F5.6-6.3
♂ の絵もそうですが、ハラビロトンボは草に止まったとき少し腰が折れた感じの姿勢ですね。やはり腹が太いと重たくて垂れ下がるのでしょうか。
岡山県笠岡市
1024×682 px
2022/08/21
Nikon D500 Mode A
Tamron A011 150-600mm / F5.6-6.3
シオカラトンボの ♂ は老成すると胴回りに青白い粉を吹きます。まるで塩を吹いたように見えることから”シオカラトンボ”なる名前が付けられたそうです。一方で ♀ の方は黄色基調の麦わら模様になるので俗称ですが”ムギワラトンボ”と呼ばれています。♂ ♀ でこれほどはっきりと呼び名が変わるトンボは他におらず、昔から人々に広く愛されているトンボであることがわかります。
この絵の個体は胴の背面まで水色に粉を吹いていますが、ここまで全身水色になるのは珍しく、大抵の場合胴の部分は茶色かったり黒っぽかったりしていることが多いです。この個体に関しては「もしかしてコフキトンボかも?」とかも思いましたが、コフキトンボはもっと小柄なのでやはりシオカラトンボだと思います。
シオカラトンボはムギワラトンボも含めて、私たちが普段から身近で最もよく見かけるトンボです。池でも川でも田んぼでも、水辺であれば日本国中どこででも見られるトンボです。
「シオカラトンボ ♂ 側面」 クリックで拡大します
東京都
1024×682 px
2023/05/03
Nikon D200 Mode A
Tamron A011 150-600mm / F5.6-6.3
童謡で「トンボのメガネは水色メガネ~」と歌われる歌があります。も30年以上前になりますが、私が好きな"Yes"という英国のロックバンドのライブを見に行ったら、Voのジョン・アンダーソンが日本向けのファンサービスでこの一節を唄ってくれました。「たぶんこの「水色メガネのトンボ」はシオカラトンボを指すのだろうな」と聞いていて一瞬脳裏に浮かんだことを思い出します。ちなみにYesのショーを見に行ったのは1992年3月2日の大阪城ホールの回だったので、ジョンは水色メガネのトンボを体験することは無かっただろうと思われます。時が夏だったら、ジョンも大阪城のお濠周辺でこの歌のトンボを見られたかもしれませんね。。残念。(ちなみに「象さん」も歌っていたような。。)
「シオカラトンボ ♂ 未成熟」 クリックで拡大します
広島県福山市
1024×682 px
2014/06/01
Nikon D200 Mode A
Nion AiAF ED 300mm F4s
たぶん自分が撮ったトンボ写真の中で生涯No.1と思っているお気に入りの一枚です。家に帰ってこの絵の出来を確認したとき、D200のCCDは上手く周囲にマッチングすると、魔法のようにきれいな色空間を生み出すものだとびっくりさせられました。今のCMOSセンサーではこの色は出ませんね。なんというか艶感が違います。
この個体、麦わら模様でぱっと見 ♀ に見えますが、腹先端の下付属器長さや副性器の膨らみ具合などを見ますと ♂ の未成熟個体だと思われます。
「シオカラトンボ ♀ やや側面」 クリックで拡大します
広島県福山市
1024×682 px
2015/09/13
Nikon D7100 Mode A
Tamron A011 150-600mm / F5.6-6.3
ときは9月半ばですから、今度ははっきりとした ♀ のムギワラトンボです。使用機材はカメラ解像度もレンズ性能も上のものよりはずっと優秀ですが、機材がよいからといっても魔法はなかなかかからないもののようです。
シオカラトンボは私のトンボの記録数の中ではチャンピオンで、過去41回の記録があります。季節も4/21~10/23までと半年以上に渡ります。場所は平地が主ですが山の池や川辺でも見られ、およそ水辺ならどこにでもいるという印象です。
新潟県十日町市
1024×682 px
2022/06/18
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR
シオヤトンボはシオカラトンボによく似た水色系のトンボです。( ♂ に限ります)サイズはシオカラトンボを一回り少し小さくした感じ。見た目で言えば、♂ の腹部が先端まで水色一色になるところが一番の特徴でしょうか。よく見かけるシオカラトンボやオオシオカラトンボは腹の先が黒いので、ここを見るのが分かりやすいかと思います。色目だけでいうとハラビロトンボが同じように腹の先まで水色(粉を吹いた色)ですが、ハラビロトンボは腹の形状が極端に太短いので見間違うことは無いと思います。
「シオヤトンボ ♂ 側面」 クリックで拡大します
神奈川県相模原市
1024×682 px
2023/05/03
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3
シオヤトンボはそれほど珍しいトンボではありません。ただシオカラトンボが人の近くに多すぎるので、これと比較すれば少数派です。私は街より少し離れた山沿いの里山周辺で見かけることが多いです。
「シオヤトンボ ♂ 未成熟」 クリックで拡大します
広島県福山市
1024×682 px
2014/05/06
Nikon D200 Mode A
Tamron A011 150-600mm / F5.6-6.3
この個体はぱっと見麦わら模様の ♀ に見えますが、♂ の未成熟個体です。腹がほっそりしているのと、黒味が強いあたりで見分けられます。
「シオヤトンボ ♀ 側面」 クリックで拡大します
新潟県十日町市
1024×682 px
2019/05/25
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3
こちらは ♀ の成熟個体です。上の ♂ の未成熟個体と比べると腹が太いのがわかると思います。またシオヤトンボは ♂ も ♀ も成熟すると眼があずき色から青色に変わります。
「シオヤトンボ ♀ 飛翔」 クリックで拡大します
神奈川県相模原市
1024×682 px
2023/05/03
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3
♀ の飛翔絵です。この絵は打水産卵している移動中のものです。先に初夏のトンボだと書きましたが、この絵を記録した日はまだGW中だったので、当日はその気の早さ(?)にちょっと驚かされました。
私の撮影記録を見ると、20回の撮影が皆4/29~6/18の初夏に固まっていて、特に5月は14回と集中しています。図鑑を見ても盛夏には姿が見られなくなるようなので、探すなら新緑のきれいな5月中がベストだと思います。
神奈川県横浜市
1024×682 px
2023/07/08
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3
オオシオカラトンボはシオカラトンボのように水色系のトンボです。姿はシオカラトンボを一回りくらい大きくした。。というよりがっちりした印象があります。また腹の先の黒色部が、シオカラトンボより短いです。どれくらい短いかというと、シオカラトンボは水色が2/3、黒色1/3くらいの比に対して、オオシオカラトンボは黒色が1/5くらいしかありません。もう一つ、シオカラトンボの眼の色は澄んだ水色ですが、オオシオカラトンボは黒に近い濃い紫みたいな色なのでここも分かりやすい特徴です。
「オオシオカラトンボ ♂ 側面」 クリックで拡大します
神奈川県横浜市
1024×682 px
2023/07/08
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3
私はトンボを好んで撮影するようになるまで、オオシオカラトンボをシオカラトンボと区別できる知識や認識は一切持っていませんで、皆「シオカラトンボ」だと思っていました。しかし、いざオオシオカラトンボを種として認識できるようになると、オオシオカラトンボは思ったより身近なところでごく普通に見つけられることが分かりました。
この絵の紹介ですが、オオシオカラトンボは草木に止まっている姿を横から見ると、翅が前倒しになっていることが多いです。翅の広げ方は種ごとに個性がありますが、このオオシオカラトンボやショウジョウトンボなど、休む時に翅を前倒しにするのにはなにか意味があるのでしょうか。あと、オオシオカラトンボは顔全体が黒いことがわかります。シオカラトンボは鼻先からアゴ周りが白いので、正面から見られれば簡単に見わけができますね。
「オオシオカラトンボ ♀」 クリックで拡大します
三重県志摩市
1024×682 px
2020/07/25
Nikon V1 Mode A
1 NIKKOR VR 70-300mm f/4.5-5.6
シオカラトンボの♀はムギワラトンボと呼ばれますが、こちらオオシオカラトンボの♀はかなり色が濃くて、何よりごつい(レディーに失礼か)印象です。私が見たトンボ科の種の中では最も大きい印象があります。
「オオシオカラトンボ ♀ 飛翔」 クリックで拡大します
広島県尾道市
1024×682 px
2013/09/23
Nikon V1 Mode A
Nion AiAF ED 300mm F4s
♀ の産卵時の飛翔です。左上に写っているのはふつうのシオカラトンボ ♂ です。比べるとやはりオオシオカラトンボの方が随分と大きいですね。特に ♀ は腹が太くて大柄に見えます。
オオシオカラトンボは22回記録があって6/4~9/23まで見ています。中でもよく見るのは7~8月で20/22がこの時期ですから「真夏のトンボ」という印象がとても強いです。場所は山の中から海辺までどこにでもいる印象です。街の公園にも普通にいますので、「まだ見たことがない」と言われる方は池がある近所の公園で是非探してみてください。
広島県世羅郡
1024×682 px
2015/06/20
Nikon D7100 Mode A
Tamron A011 150-600mm / F5.6-6.3
ヨツボシトンボは私的には出会いが少ないトンボです。図鑑で見ると日本全域で見られる分布になっていますが、観察できる時期がほぼ5~6月になっていて、本格的に夏になってくると見られなくトンボのようです。しかし私は9月中旬に長野の高地で一度見かけているので、絶対ということもなさそうです。高地だと涼しいから、時期が遅くなっても見られるのかもしれませんね。
姿は ♂ ♀ 共に渋いオレンジ系なのでかなり地味な印象です。
「ヨツボシトンボ ♂ 側面」 クリックで拡大します
広島県世羅郡
1024×682 px
2015/06/20
Nikon D7100 Mode A
Tamron A011 150-600mm / F5.6-6.3
ガマの穂に止まったヨツボシトンボの ♂ です。名前の通り翅の前側に黒い斑が4つ見えます。ただし ♂ の方はそこまで目立つほどの黒斑ではないので、初見ではアキアカネの初夏ものやウスバキトンボなどと見間違うことも多いかもしれません。とくに横から見るだけだと、ヨツボシトンボと気づかないかもしれません。(それは私です)
私の4度ある記録は、いずれも高原の湿地帯みたいな場所で見ています。藻が浮いているようなそこそこ広くて浅い沼池が好みなようです。図鑑では平地でも見られるようになっていますが、昨今の土地開発状況を考えると街に近い場所で出会うのは難しくなってきているのかもしれませんね。
ヨツボシトンボはアップでよく見ると胴の横や、腹の上側の胴付近など、薄い色の部分は実は中が透けて見えているようです。ちょっとびっくりです。。
「ヨツボシトンボ ♀」 クリックで拡大します
長野県松本市
1024×682 px
2024/08/03
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3
こちらは長野の高原湿原で見つけたヨツボシトンボの ♀ です。特に翅の真ん中の星が上の ♂ 個体より太くて目立つのがわかりますでしょうか。この個体を見つけたときは、「ここまではっきりと模様が出ていれば、ベッコウトンボと比べても負けないくらいきれいな姿だよな」と感じました。(もともとヨツボシトンボはベッコウトンボとかなり近い種です)
この個体はまるでハラビロトンボのように腹に横幅があって、しかも腹の中が黒く透けてみえます。他の ♀ 個体もおよそ太めだったので、おそらく産卵前の状態なのかなと思われます。
ベッコウトンボは絶滅危惧種1A類(CR)という希少種です。このランクに指定されているトンボ目は日本で5種いますが、鳥で言えばコウノトリやトキと同じレベル、と言えば危険度もご理解いただけるのではと思います。日本での産地は既に静岡県、山口県、大分県、鹿児島県などのごくごく一部となっています。今回私はそのうちの静岡の産地に行ってみました。
現地は広い湿地が整備された公園になっています。まず最初に池の縁を歩きながらあちこち覗いてみましたが、トンボの姿は一向に見つけられません。すると丁度腕章をつけたトンボを見守る会の方が近くを通られて、ベッコウトンボを見られる場所まで案内していただけました。
そこは本来トンボが生息しているはずの池からは少し横に外れたところにあって、たくさんのトロ船コンテナが置かれていました。ベッコウトンボはもはや、「施設の中で給餌を行い、網で外敵侵入を防ぎつつ、ヤゴを保護・管理しなければ種を維持できないところまで来ている」いうことです。残念ながら自然回復だけでは絶滅を避けられない状況になったため、管理・保護下で繁殖させつつ、最終的には元の池にも戻らせ、徐々に自然環境の下で復活させていこうという作戦だと聞きました。そういう意味でもこの地は豊岡のコウノトリの里公園やトキの森公園での保全状況と同じようなイメージだと思います。もはや人の手助けがないと種が保たれない状況にあるということですね。幸い、そのコンテナの周囲で数十頭のベッコウトンボが飛んでいたので、トンボの邪魔をしないように私も観察させてもらいました。
観察しながら聞いたお話しでは、ベッコウトンボが減った理由として、ベッコウトンボ自体がトンボの中でもそもそも生き延びる力が弱いところにあると聞きました。植生や水質などの生息環境の変化にも敏感な上に、最近になって池に放たれた天敵の外来種や競合種がとどめを刺しているとのことでした。確かに池にはアカミミガメがひなたぼっこしている姿も見えたので、見た感じ今後もまだ道は厳しそうです。池での繁殖がある程度の数まで増えさえすれば、あとは放っておいても大丈夫になるだろうとの思惑らしいので、いつかそうなることを祈りつつ場を去りました。
「ベッコウトンボ ♂ 」 クリックで拡大します
静岡県
1024×682 px
2024/04/13
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3
こちらの個体は成熟した ♂ です。本来鼈甲(べっこう)は茶色に黒色斑の模様ですが、その雰囲気は ♀ や ♂ の若い個体に限るようです。♂ はほぼ青黒いイメージですね。
「ベッコウトンボ ♂ 成熟前?」 クリックで拡大します
静岡県
1024×682 px
2024/04/13
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3
こちらはぱっと見で ♀ のような茶色い色をしていますが ♂ の個体です。色目的には成熟の少し手前くらいで、成熟した ♀ よりは少し黒ずんだ感じです。ただこれくらいの色目までが鼈甲っぽい感じで、バランス的にもきれいなイメージがありますね。
「ベッコウトンボ ♂ 未成熟」 クリックで拡大します
静岡県
1024×682 px
2024/04/13
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3
こちらはまだ若い個体で、色目的に ♀ と変わりない感じです。
「ベッコウトンボ ♀」 クリックで拡大します
静岡県
1024×682 px
2024/04/13
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3
この個体は羽化後間もない ♀ です。おそらく当日の朝に羽化したばかりなのだと思われます。残念ながらこの日は ♀ の姿が少なくて、水面に打産しているぶれた写真以外は ♀ 成虫を記録できませんでした。次、機会があれば、ベッコウ色をした ♀ を是非撮りたいです。
ベッコウトンボの記録は上の一度のみです。4月の中旬と、トンボ観察としてはかなり早い時期ですが、ベッコウトンボに関しては最近更に時期が早まっていて、4月上旬がピークになっているようです。以前は5月中旬くらいまで見られたようですが、3月末から4月中旬くらいが観察にはよい時期なようです。
数ある日本のトンボの種の中でも最も華やかなのは先に紹介したチョウトンボではないかと思います。光線の具合で青かったり紫だったりに妖しく輝き見るものを魅了します。一方で自分がこれまで写したトンボの写真で一番のお気に入りは、日本ならどこにでもいて姿も地味なムギワラトンボの一枚だったりします。周囲の景色とマッチした時に美しさが倍増するといいますか、トンボの写真は思った以上に奥深いと感じます。今後も修業を重ねたいと思います。
2023/2 魚屋 拝
(TOP画像 ノシメトンボ 2003/09/15 D100 300mm/F4 神石高原町周辺にて)
初出:2023 改訂:2024/08/14 ウスバキトンボ、ハラビロトンボ、ヨツボシトンボの絵を差し替え。文章の見直し。
改訂:2024/09/07 ムツアカネ、アカカネの絵を追加。文章の見直し。