Japanese Wild Birds in Fukuyama
サンコウチョウ 三光鳥
Sankouchou
Terpsiphone atrocaudata
Japanese Paradise Flycatcher
コバルトブルーな目周りと超々長い尾羽をもつ
南方系の夏の小鳥
福山市、庄原市、八王子市周辺での観察について
夏の美鳴鳥といえば、代表はウグイス、オオルリ、コマドリと言われます。所謂三名鳥というものです。サンコウチョウはときにはこれらの鳥とその座を争うほどの美しい鳴き声を聞かせてくれる小鳥です。(私的にはキビタキやミソサザイも競争仲間に入れてあげたい)地鳴きはちょっとしゃがれたギーギーという声ですが、その後澄んだ声でヒーホーヒー・ポイポイポイとなくのが「月・日・星・ホイホイホイ」と聞き為しされて、名前の通り三光鳥と呼ばれるようになりました。私はときおり大河ドラマの時代劇なども見ますが、お殿様がお城で休んでいるバックで聞こえる鳥の鳴き声でサンコウチョウが使われていることがあって、「ああ、これは夏の季語なんだな」と感じたりしました。
また声だけでなく、見た目も非常に特徴的、というより日本の小鳥の中では奇異と言っていいほど変わった姿を持っています。まず、尾羽が極端に長いこと。尾羽を除く体長は10cm程度なのに2本の中央尾羽は30cm以上にも達するそうです。次にお顔。キーワードはコバルトブルー。およそ日本の小鳥では見られない、派手な青色の目周りとクチバシをしています。青でもなく、水色でもない。非常に鮮やかな「青い目」はちょっとユーモラスですらあります。実際にはメジロと一緒で、目自体は黒で、その周りにコバルトブルーの色目の環があります。当然大きく丸い目のように見えて目立つわけです。身体自体は顔から背中が黒もしくはこげ茶、腹から下が白と基本モノトーンで地味な色目なのに、顔のコバルトブルーのパーツと超長いひらひらした尾羽で、漫画のような印象深い姿の鳥です。これらの特徴で、少し希少性もあって鳥見の者にとっても憧れの鳥の一つになっています。
こんな「是非見てみたい小鳥」なのですが、日本で見られるのは夏の間のみ。またそれなりに山深い場所で、杉のような針葉樹と広葉樹が混じったような暗い森。繁殖時にエサとなる虫が沸きやすい、例えば近くに川が流れる湿った場所。のように、結構観察しにくい場所にいて、中々観察のチャンスがありません。姿を探すに一番はやはりさえずりをもとに見つけるのが一番です。特に飛んできて巣作りに入る前の5月後半とヒナが巣立つ7月中旬以降くらいが見つけやすいと思います。中には巣を探しておいて、特徴的な壺状の巣で育雛しているところを絵にしようと、大勢が囲んでギャラリー化してしまうことがるようです。せっかく長旅で日本にやってきてくれた小鳥ですから、しっかりおもてなししなければなりません。サンコウチョウへ我々ができるおもてなしは、豊かな自然を提供することですね。間違っても巣を放棄させないようにあまり集まってワイワイしないようにしたいものです。
左「サンコウチョウの動画」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。ファイルは21MBあるのでDL環境にご注意ください
サンコウチョウ ♂ その1、その2
1枚目の個体は庄原市の山の中で撮りました。近くにブッポウソウの飛来地があり観察に出かけて近辺の山をうろついていたところ、近くから「ポイポイポイ」の声が聞こえてきました。ブッポウソウは見通しの良い場所にいて、こちらが車に隠れていれば逃げませんので、サンコウチョウ捜索が優先に代わります。なんとか声を頼りにひらひら飛ぶ鳥を見つけることができました。その谷筋では山肌から清水・岩水が沁み出て、谷の小川に流れ込んでいます。谷に沿っては羊歯苔や草の芽の生えたような緑の道があります。頭上は杉の木と雑木林が混じった陽の届かない暗い林です。道沿いではサナエトンボや蝶、蛾などが飛んでいました。
2枚目は八王子市で撮った♂くんです。初めて出会ってから7年経って、やっと全身をきれいに写すことができました。ちなみに私の場合、サンコウチョウを撮りに行くときは必ずズームレンズを用意していくことにしています。サンコウチョウを尾羽の先までフレームに入れるには、ズームの方が確実だからです。といいつつも焦っていると、なかなか全身を入れられなかったりすることも多いです。修業ですね。
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サンコウチョウ ♀
最後は♀さんです。サンコウチョウの♀は背中の茶色みが濃く、また尾羽が短めです。ただ短いといっても普通の鳥にすれば長めの感じです。セキレイくらいの感じでしょうか。目の周りの青色リングもオスに比べると細いですね。このように ♂ にくらべるとインパクトは弱いですが、それでも他の鳥たちと比べるとチャーミングできれいな鳥だと思います。
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観察データ
場所と回数:広島県福山市 2、広島県庄原市 1、八王子市3、都合6回。関東でも声だけはたくさん聞いていますので、やや深い低山の暗い森で広く見られる小鳥だと思います。絵と音に残せたのは6度だけですが、声を聞いて存在を確認できたのは各地で相当あります。中々姿を見せてくれない小鳥ですね。
観察月と回数:
1月0
2月0
3月0
4月0
5月2 〇〇
6月1 〇
7月3 〇〇〇
8月0
9月0
10月0
11月0
12月0
都合3回
夏の渡り鳥です。5月にやってきて6月は繁殖の時期で少し声が聞こえにくくなくなります。7月に入るとまた鳴き声がよく聞こえるようになります。
6月のサンコウチョウは子育てに忙しい時期です。この♂くんも餌を口にくわえて、いまから雛たちの元に戻っていくのでしょうか。
(トップ画像 サンコウチョウ 2021/06/20 D500 150-600mm F5.6-6.3 庄原市周辺にて撮影)
初出:2020/09/27
改定:2021/06/20