ハワイガン ハワイ雁
hawaigan
Branta sandvicensis
Nene / Hawaiian goose

ハワイガン カモ目カモ科
 一度絶滅しかけた
 溶岩のある草原に棲む中型のガン

   

ワイキキ動物園での観察について


ハワイガンのこと、動画の紹介

 私はこれまで3度オアフに行っておりまして、そのうち1989年と1919年の2回はワイキキ動物園を訪れています。一度目は新婚旅行での立ち寄りにて。2度目は息子の婚式の後、最終出発日の朝に駆け足でカピオラニ公園に鳥見に出かけ、そのついでにハワイガンを見るためだけの目的で短時間の入園となりました。今回2019年は丁度入り口が鳥のコーナーだったもので、奥の動物コーナーは全く見ないままちょっともったいない訪問になりましたが、念願のハワイガン=ネネが見れたので大満足となりました。
 ワイキキ動物園はワイキキから歩いて10分くらい、丁度ダイヤモンドヘッドがきれいに見れる海辺に位置します。入園料は大人$19ですから安くもなくバカ高くもなくといったところでしょうか。もちろん子供連れの方が多いですが、歳を召した方々もいらっしゃって市民の動物園といった感じです。園内ではおこぼれを狙った小鳥も多くて、すぐ横のカピオラニ公園では見られなかったブンチョウの群れなどもいました。
 ハワイガンは現地名では”Nene”と呼ばれています。種としてはコクガン属で、日本のシジュウカラガンや移入種として居着いていることがあるカナダガンなどとごく近縁となります。もともとオアフにはおらず、マウイ島、カウアイ島、ハワイ島などの溶岩地帯の高地に棲むという不思議な生態をもつガンです。動物園で見る感じも結構よく歩きます。足ヒレはるものの、他のガンよりは小さくなっているようです。

 ハワイガンの動画です。動物園の狭い檻ですが、空はオープンです。南国なので生き物ものんびりとした印象ですね。
 左「ハワイガンの動画」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。サイズは30MBありますのでDL環境にご注意ください。


ハワイガン

 ハワイガンは1950年頃には残りわずか30羽というところまで減ってしまい、絶滅寸前で保護下に入って、今はなんとか1,000を越えるところまで持ち直したとのこと。絶滅に瀕した歴史をもつところもシジュウカラガンにそっくりです。
 関東に移り住んでから毎年訪れている宮城県の蕪栗沼周辺でシジュウカラガンを見ているわけですが、首の色以外は姿形がとてもよく似ています。しかし動物園ならではのドアップで観察すると、このネネは首当たりの毛がなんというか羊の毛のように撚れていることが分かります。羽一枚一枚は撚れていないようですが、首全体でみるとどことなくドレッドヘアみたいな感じになっています。マガンやヒシクイの首回りも犬の毛のように少し縮れた感じですが、ネネの首はもっと大きな撚れに見えます。これまで色々な鳥をみてきましたが、このような羽毛の生え方をした鳥は他に記憶がありません。一体どういう効果があるのでしょうか。そもそも衣類の保温で使用するダウンフェザーという羽毛はガチョウの羽毛が主であって、ガチョウはガンの家禽でありますから、ガンという鳥はとても柔らかい羽毛を持っているのだろうと思い込んでおりました。それの原種が縮れというか縺れたような毛になっているというのはちょっと意外な気がしています。
 動物園で撮ったネネの絵を紹介します。一枚目は全身の姿。動物園で飼われているので、かわいそうですが風切りは切られています。風切りのある姿は小さいですが三枚目の絵の中にあります。二枚目は首から上のアップです。優しい目をしていること、首の縮れ毛などが見て取れるかと思います。三枚目はネネの歴史が書かれた看板です。何万と居た種があっという間に30羽まで減ってしまうのですから、環境破壊(天敵の移入という意味での環境破壊ですね)を起こす人間の罪はとても重いです。ヤンバルクイナがマングースなどに追われるのも同じですね。外来種に罪はありませんが、増えると駆除せざるを得ないわけで、それはそれで仕方ないこととはいえ、結局自作自演している人間の身勝手さは誰も罪に問われていません。せめてこれからの世の中は、過去の反省に立って同じ失敗を繰り返さないようにしたいものです。自然界・生物界あっての地球世界であって、人間もその上に立っている限り、生物たちをないがしろにしているといつかしっぺ返しがくるだろうと思います。

 左「ハワイガン」「ハワイガンのアップ」「動物園のネネの看板」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。


このページに関して

 本来「日本の野鳥」というコーナーは、私が自分の目で見て写真に収めた「野生の鳥」の姿を紹介するものです。さて、このネネのページは、縁があってハワイという場所に行ったとき、その地域の象徴的な鳥としてネネという鳥がいることを知り、しかし原産地にまで至る時間がなかったため、せめて動物園でその姿をみようと思って出かけたときの記録です。ですので本ページは「日本の野鳥」のカウントには入っておらず、あいうえおメニューにも載せていません。しかし実際にネネを見て、また当地でネネの歴史が書かれた看板などを見るにつけ、是非ここで紹介しておきたいと思うようになりました。そこで近縁で同じような歴史を持つシジュウカラガンのページに埋め込む形をとらせてもらうこととしました。ネネの悲しい歴史と今ハワイで人々から愛されている姿を、日本の皆さんに少しでも知っていただければ幸いです。

 (トップ画像 ネネの木製プレート 2019/4/16日にワイキキで購入 

 初出:2019/11/24