ウトウ 善知鳥
Utou
Cerorhinca monocerata
Rhinoceros Auklet

ウトウ チドリ目ウミスズメ科
 白い髭と眉毛(?)が目立つ
 北の海鳥


ウトウについて



 ウトウはウミスズメ科の海鳥で、普段陸で暮らす私たちには中々縁がない鳥です。ただ図鑑の世界ではかなり目立つ鳥であります。まるで髭や眉毛のように見える白い飾り羽が非常に特徴的で、自分にとっては子供のころから「一度は見てみたい鳥」の代表格でした。
 念願かなってウトウと初めて出会えたのは、北海道旅行からの帰り。函館から大間へ戻るフェリー上でのことでした。時期はGWの頃で、甲板で観察しているとまだ冬のように冷たい風が私の頬に吹きつけてくる季節です。なので海や波の様子を見ている自分には心に余裕が生まれません。ときどき急に現れる海鳥が一体何なのかなど、海鳥観察初心者の自分には察する暇もなく、とりあえずはなんとか写真に残しておくだけで必死でした。そうして青森側に近づいた時間帯でしたか、船から少し遠いところを流れていく(ように見える)少し小さめの黒い鳥をカメラに収めました。「今のは一体何者?」と気になってすぐに再生ボタンを押して拡大してみると、なんとあの図鑑で見るお髭&長眉毛の顔が写っていたではありませんか。「へぇ!ここの海にはこんな面白い鳥もいるんだ」と感激したことは今も忘れられません。
 ウトウはその後も2度観察しています。2度目は6月の道北・稚内~礼文島航路にて。ほとんど海鳥が見れなかったこの日、唯一見つけて飛び去る姿を写せたのがウトウでした。3度目はこれも6月の道東の海鳥観察クルーズ船にて。こちらは当日霧が濃かったものの、次々と現れるウトウを50m以内の間近から堪能することができました。当日最も数を見た海鳥だったので、ある意味、当日主役の鳥だったと思います。
 このように観察専用船だけでなく、フェリーでも見られる鳥なので、観察のチャンスはそこそこ多い海鳥な印象です。なにより見た目が面白いので何度見ても嬉しい。一方で波間に浮かぶ鳥なので、図鑑のようなきれいな絵に残すのは中々難しいです。出会いのシチュエーションとして鳥との間に隠れる場所がありませんし、船が50mより近づくとさすがに飛んで逃げられます。そんな距離感がよけいに好奇心を持たせてくれるのかもしれませんね。また観察の機会を是非持ちたいものです。






「ウトウ」 クリックで拡大します。

ウトウ


北海道 道東
1024x682 px
2025/06/30
Nikon Z6II Mode A
AF-S NIKKOR Z 400mm f/4.5 VR S +
Z TELECONVERTER TC-1.4x


 こちらは霧が幾分残っている環境でしたので、少しコントラストに欠ける絵になりました。それでもウトウの特徴的な顔や体全体の羽の色がわかる程度には記録できたので、とても嬉しかった一枚です。

 



「ウトウ 霧の中」 クリックで拡大します。

ウトウ 霧の中


北海道 道東
1024x682 px
2025/06/30
Nikon Z6II Mode A
AF-S NIKKOR Z 400mm f/4.5 VR S +
Z TELECONVERTER TC-1.4x


 船が出港後しばらく、あたりの海は深い霧に包まれていました。そんな中、突然現れては消えていくウトウとたくさん出会いました。当初は霧を恨んだりしてみましたが、今ではそれも良い思い出の一つとなっています。




「ウトウ 霧が晴れて」 クリックで拡大します。

ウトウ 霧が晴れて


ウトウ 霧が晴れて


北海道 道東
1024x682 px
2025/06/30
Nikon Z6II Mode A
AF-S NIKKOR Z 400mm f/4.5 VR S +
Z TELECONVERTER TC-1.4x


 クルーズ船の観察行程がほぼ終わったころ、やっと周囲の霧が晴れて青い波が見られるようになりました。思えば最初から最後まで我々に付き合ってくれたのはウトウ達でした。サービスしてくれてありがとう。
 飛んでいる姿を見るとウトウはかなり丸っこく見えます。頭でっかちで尾羽が短いので、飛ぶのはあまり得意な感じではなさそうですね。。
 



「ウトウ 大型フェリーから」 クリックで拡大します。

ウトウ 大型フェリーから

函館~大間航路
1024x682 px
2022/05/06
1024x682 px
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR


 こちらは初めてウトウと出会ったときの記録です。函館~大間への大型フェリーで撮った記録です。APSC+500mmの機材で撮り、現像に際してはモニター上倍率50%くらいで、サイズが1024pix程度になるように見越したリサイズをしています。それでもウトウの特徴はしっかり見れるので、大型フェリーからの観察も全然ありだと思います。というかチャンスがあれば何度でも乗りたいくらいです。
 




観察データ

場所と回数:函館~大間航路 1、稚内~礼文航路 1、道東クルーズ 1、計3回。
 いずれも北国の船上で見ています。見るのはいつも2~3羽くらいの少数です。黒い影がポツンと波の上に漂っている感じですから、常に臨戦態勢で探すべし!でしょうか。。

観察月と回数:
1月0
2月0
3月0
4月0
5月1 〇
6月2 〇〇
7月0
8月0
9月0
10月0
11月0
12月0
計3回
日本では北国(主に北海道一部青森)で繁殖しているのでこちらでは留鳥もしくは夏鳥。冬は本州以南にも散らばっていて、フェリーなどから見られる場合もあるそうですが、出会いの難易度はかなり高い気がします。一番出会いが期待できるのは、夏の北海道で何かしらの船に乗ることだと思います。



 (トップ画像 ウトウ 2025/6/30 道東 Z6II + 400mm/4.5 + 1.4x )

 初出:2025/07/14