オオソリハシシギ 大反嘴鴫
Oosorihashishigi
Limosa lapponica
Bar-tailed Godwit

オオソリハシシギ ドリ目シギ科 絶滅危惧II類 VU
上反りした長いクチバシをもつ、やや大型のシギ


オオソリハシシギについて



 オオソリハシシギは春と秋に日本を訪れる渡り鳥です。非繁殖期はニュージーランドで過ごし、繁殖はアラスカで行う長距離移動の渡り鳥として有名"**"で、春には日本等極東地域を経由してアラスカへ、秋は逆向きとなってアラスカからニュージーランドへ一気に渡るという、もの凄い飛翔力(1W以上ぶっ通しで飛ぶとか。。体力も凄い。。)を持った鳥です。よって春は日本で成鳥を見ることができますが、秋の渡りはまだそこまで体力ができていない若鳥たちが、安全策をとって(小刻みに)日本を経由して帰るパターンが多いそうです。私の記録を見ても、9~10月頃に関東の干潟で見るオオソリハシシギは、当年生まれにのように見える若鳥らしい個体が確かに多いです。

 オオソリハシシギは名前の通り大変長くて、少し上向きに反ったクチバシを持っています。観察ではこれを砂浜や泥に刺してカニなどを捕っているところをよく見ます。土中のカニを捕るシギといえばシャクシギ類も同じです。しかしシャクシギは下向きにアーチ状に反ったクチバシで、こちらオオソリハシシギはクチバシが反対・上向きに反っています。私の記録写真では両者とも目元まで土に埋めて餌を探している絵が残っていますが、ここだけ見れば姿勢もあまり変わりません。でもきっと土中の刺し様は何かしら違っているのでしょうね。一度土の中を透視して見てみたいものです。

 "**" 渡り鳥の不思議な習性や能力などについて、いつも参考にさせてもらっている本を紹介しておきます。(私が購入してから時間が経っているため、価格等出版状況は今と違っているかもしませんのが、そのへんはご容赦ください)

 「鳥ってすごい!」 ISBN978-4-635-51034-9 ¥900 + 税 山と渓谷社
 「日本の渡り鳥(観察ガイド)」 ISBN978-4-8299-7805-4 ¥2,800 + 税 文一総合出版



「東京湾のオオソリハシシギ ♂ 夏羽」 クリックで拡大します。

東京湾のオオソリハシシギ ♂ 夏羽

千葉県東京湾
1024x682 px
2017/04/22
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4EFL ED VR


 春の東京湾で見つけたオオソリハシシギ。頭から腹まで赤くなるのは ♂ の特徴です。



「東京湾のオオソリハシシギ 群れ 夏羽」 クリックで拡大します。

東京湾のオオソリハシシギ 群れ 夏羽

千葉県東京湾
1024x682 px
2017/04/22
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4EFL ED VR


 こちらは群れの様子です。胸の色が白っぽいのは ♀ だと思われます。右端の方にチュウシャクシギとキョウジョシギが一緒に写っているので、それぞれのサイズ感が分かるのではと思います。



「東京湾のオオソリハシシギ ♂ 着地」 クリックで拡大します。

1東京湾のオオソリハシシギ ♂ 着地

千葉県東京湾
1024x682 px
2017/04/22
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4EFL ED VR


 ♂ が飛んできて着地しようとする瞬間です。身体が赤いのに対して、大きな翼がモノトーンの細かな模様になっていて、とてもカッコいいと感じます。翼が大きいのは長距離移動を実現するための進化なのでしょうね。



「晩夏のオオソリハシシギ カップル?」 クリックで拡大します。

晩夏のオオソリハシシギ カップル?

千葉県東京湾
1024x682 px
2017/08/26
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4EFL ED VR


 最初に、日本で見る秋のオオソリハシシギは若鳥が多いと書きましたが、この2羽のオオソリハシシギは珍しいことにどうやらどちらも成鳥っぽい姿をしています。左が ♀ で、こちらの絵を拡大して確認してみたころ、羽模様が茶色の一様に見えました。これは ♀ 成鳥冬羽の特徴です。また右の個体は腹回りに少し赤みが残っていて、こちらは冬羽に換羽中の ♂ ぽいと思われます。


「オオソリハシシギの幼鳥」 クリックで拡大します。

オオソリハシシギの幼鳥

千葉県東京湾
1024x682 px
2016/10/16
Nikon D500 Mode A
Tamron A011 150-600mm / F5.6-6.3


 ピンク色したクチバシの艶やかさなどを見た感じ、おそらく幼鳥だと思われる個体です。まだ今年生まれたばかりのお子様でしょうか。子供とはいえ身体はもう大人並あって、砂の足跡などかなりビッグフットな感じです。
 黒い翼先端の下にまだら模様の短い尾羽が見えます。よく似たオグロシギはここが黒いので見分けに使えます。私はオオソリハシに出会う度にここに注目しつつ、未だ黒かったことがありません。残念。



「オオソリハシシギの若鳥 顔のアップ」 クリックで拡大します。

オオソリハシシギの若鳥 顔のアップ

千葉県
1024x682 px
2021/04/30
2017/04/22
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4EFL ED VR


 こちらは幼鳥もしくは若鳥のアップ絵です。長いクチバシが先端近くでわずかに上反りしているのがわかりますでしょうか。ちなみに、クチバシのピンク色は若鳥だけでなくて、雌は成鳥になっても付け根から半分くらいピンク色をしています。
 



「オオソリハシシギの飛翔」 クリックで拡大します。

オオソリハシシギの飛翔

千葉県東京湾
1024x682 px
2015/09/21
Nikon D500 Mode S
AF-S NIKKOR 500mm f/4EFL ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3


 オオソリハシシギの飛翔絵です。羽模様的には若鳥な感じです。またクチバシが短めに見えるので ♂ の可能性が高いと思われます。
 もう一点、腰を見ると一様にまだら模様が濃いことがわかります。日本に飛来するオオソリハシシギにはおよそ2つの亜種があって、一つがこの絵のL.L.Baueri。もう一つがL.L.Menzbieriで、こちらはコシジロオオソリハシシギとも呼ばれていて、名前の通り腰が白いとのこと。亜種Menzbieriは移動経路がオーストラリア-(大陸沿いに)黄海周辺-シベリア方面なため、西日本で時折みられるそうです。私は現在関東民なのでまだ見たことがありません。





観察データ

場所と回数:佐賀県 有明海 1、広島県瀬戸内海 2、千葉県東京湾 11、計14回。干潟だけでなく、磯や川沿いの田んぼなどでも見られます。

観察月と回数:
1月0
2月0
3月4 〇〇〇〇
4月0
5月0
6月0
7月0
8月3 〇〇〇
9月2 〇〇
10月4 〇〇〇〇
11月1 〇
12月0
計14回

 旅鳥です。春と晩夏~秋に見ています。赤く色づいた ♂ が見たいなら4月が良いですね。私の場合4月11日~4月22日の間に記録が残っています。秋は結構長い時間見られますが、見られるのは幼鳥が多いです。




  (トップ画像 オオソリハシシギ 2018/10/21 D500 500mm F4 千葉県東京湾)

 初出:2016/10/16
 改訂:2016/10/19 文章の表現の見直し
 改訂:2017/07/23 夏羽画像の追加
 改訂:2017/10/01 夏羽画像の追加
 改訂:2018/10/25 トップ絵の変更
 全面改訂:2025/05/25 全面書き直し