カリガネ 雁金
Karigane
Anser albifrons
Lesser white-fronted goose

カリガネ カモ目カモ科 EN 絶滅危惧種第II種
 幼い顔をした(?)マガンの弟分

   

宮城県登米市周辺での観察について


カリガネとの出会い、動画の紹介

 2015年11月のこと、初めて伊豆沼へマガン観察に出かけました。伊豆沼に関してはこのときはまだ「マガンがたくさんいる湖がある」程度の知識しかなく、宿だけは伊豆沼湖畔の交流センターを確保してとりあえず出かけてみました。
 結果、このときは多数のマガンとオオハクチョウを観察できただけでなく、多数のヒシクイ(オオヒシクイ)、2羽のシジュウカラガンなどの希少種となるガン類も観察できました。ただ希少種として並び、当所で見られるとあった「カリガネ」に関しては、最後までその姿を見ることができませんでした。一方で、このときの「広い空を悠々と飛ぶマガンやハクチョウの姿」にはいたく感激しまして、私は以後ほぼ毎年、宮城の登米市周辺にガン観察に出かけるようになりました。
 同じ場所でも回数を重ねると、色々と土地勘もできて、観察にも余裕がでてくるるようになります。回数を重ねるにつれ、ハクガンやコクガンなどとも出会うことができました。しかし相変わらずカリガネだけはどうしても見ることができません。4度目の挑戦となった2019年からは、それまで一泊だったところを二泊に伸ばして、その分カリガネ探し(田んぼ巡り)に時間を費やしたものの、結果、見事なまでの坊主に終わりました。
 ところが現場では気づかなかったものの、家に帰ってから写真を整理する過程で、マガンの群れの中に一羽のみカリガネらしき姿が見つかりました。残念ながら、かなり遠い姿の絵でありましたし、車内から手持ちで撮った不安定な絵でもあったこともあって、姿はかなりぼやけ気味です。「ぎりぎり証拠写真」レベルの絵な上、カリガネはもともとがマガンとの判別がとても難しい種ですから、果たしてこれが本当にカリガネなのかどうか、とても判断に苦しみました、しかし悩んだ結果、「やはりこれは(おそらく)カリガネだろう」と自分の作る「写真に撮った鳥記録」に登録することとしました。ただ、登録したのは半分は苦労して走り回った自分に対してのご褒美的な意識が強かったかなと今にして思います。
 さて、その後も弊Webのカリガネの項を見返すたび、「これって合ってるかな?」と不安がよみがえります。「やっぱり記録から外すべきではないか」と、以後もずっと悶々とし続けることとなりました。一方でカミさんなどは「よかったな。もう(同じところばっかり)行かんでええな」と言ってくれています。ただ私はときが経つにつれ「やっぱりもう一度行くしかないよな」と決心するようになっておりました。
 残念ながら2020年は色々あって登米にはいけませんでした。しかし翌2021年は「今年は絶対伊豆沼へ戻るぞ」と早い時期から決め、カミさんにも宣言。幸いコロナも一旦収束したので12月になって満を持して登米へリベンジに出かけることとなりました。

 2021年12月10日早朝、現地にたどり着いた我々は、先に沼でガンやヒシクイ、ハクチョウの飛び立ちなどを観察した後、いよいよ登米市の田んぼに移ります。午前8時頃にはいつものマガンがたくさんお食事中な地域に到着。前回カリガネらしき個体をみつけたあたりを中心に、半径1~2km程度でしょうか、田んぼという田んぼを端から端まで車で回り、車中から双眼鏡で見える限りをスキャンしていきます。少し怪しげな個体がいればさらに換算900mmのTamronA011レンズを通して確証拠写真を撮りながら、絵を拡大再生して即確認します。しかし、今回も現れるのはすべてマガンばかり。。。そうこうするうちすでに昼が近づいてきます。「ぼちぼち飯食いにいくか」とカミさんに話したところ、「あそこにかたまりがおるから、そっち行ってみ」と有り難い助言をいただき、ハンドルの向きは再び田んぼの中へ。すると手前の集団の向こう側、畔のあたりに超怪しい個体が見つかりました。すぐにカメラを向けて覗いてみたところ、これはまごうことなきカリガネではありませんか。しかも数羽います。それ以後はカメラとレンズをとっかえひっかえして、ひたすら記録を撮りました。あきらめかけた私の尻を押してくれたカミさんに感謝。。。

 カリガネは畔付近にいる4羽のみです。手前を横切るややぼけた個体と奥の群れは皆マガンです。また聞こえてくる声もマガンのものです。左「カリガネの動画」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。


カリガネ1羽、カリガネ4羽

 上記の通り今回はカリガネをゆっくりと観察することができました。そもそも数少ない出会いの上、多少距離はあってもじっくり観察する時間が取れるなどは滅多にないチャンス(観察中のマガンの群れは大抵なにかしらですぐに飛び立つことが多い)です。D500+Tamron A011、、D7100+ゴーヨン or ゴーヨン+1.4x、D200+サンヨン+1.4x の各種組み合わせで記録してみました。結果等倍で見比べて一番写りがよいと感じたのはD7100+ゴーヨンのコンビでした。(D500よりD7100の方が解像度が高いのが効いたのかな?)
 これにさらに1.4xテレコンを重ねたものは、等倍だとやや鈍ったイメージの絵になります。しかしこれを同じ画角にまで縮小して比べれば、ゴーヨン単体とほぼ同じ感じになります。結局、現像のときに見栄えをよくするために縮小するのであれば、最初からゴーヨン一本で良いかという結論になりました。トリミングなしで撮ったままの絵で、より望遠な絵にしたいとき(これは特にビデオのような場合に当てはまります)以外は、テレコンは不要かなと感じた次第です。
 テレコンなしのゴーヨンそのままだと、車内手持ちで外で三脚上で撮るのと同程度の写りを確保できたので、機動性を考えても今後は基本テレコンなしで行こうと思うようになりました。

 二枚をまとめて紹介します。単体の絵はD500とゴーヨンのみで車内から手持ちで撮ったもの。絞りはf8。4羽いる絵はD7100にゴーヨン+1.4xで700mm(980mm相当)で撮ったものを少しトリミングしてから縮小加工したものです。絞りはf5.6開放。こちらは車外に出て三脚にセットして撮っています。

 左「カリガネ1羽、カリガネ4羽」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。


カリガネの背伸び

 観察の最中、羽を広げて伸びをしてくれました。カリガネは丸っこい姿でずんぐりむっくりした印象なのに、翼を広げるとびっくりするくらいに羽が長いことがわかります。これだけ長いと逆にマガンとのサイズ差も減り、仮にマガンに混じって飛んでいても見つけるのは至難の業のように思えます。

 左「カリガネの背伸び」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。


初カリガネ(?)

 前回2019年12月21日に登米の同じ田んぼで撮った「カリガネだろう」と思われる個体です。
 この日も、カリガネを探して人に教えてもらった地域周辺を相当ぐるぐる回ったものの、結果的に出会うのはマガンばかり。そのとき、「これはもしかして当たり?」と見つけたのがこの個体。しかしなんとも間が悪いことに、時を同じくして向こうから犬の散歩させる方が近づいてきて、レンズをシャッターを切り始めた瞬間に群れは飛び立ってしまいました。。。
 顔やくちばしの形はカリガネにとても似ています。しかし顔前面の白い部分はカリガネのようなマガンのようなどちらとも言えない感じですし、くちばしも赤みが薄い気がします。また顔の色目は薄めに見えますが、光が強かったこともあってどちらとも言えない感じです。目の回りの金色環もやや弱い感じですが、拡大してみると一応ありそうな感じです。ただボケているのでいずれもはっきりしない。
 可能性としては半分以上はあるかなと、一応私にとっての初カリガネとして記録しています。

 左「初カリガネ(?)」のサムネイルをクリックしてご覧下さい。一番左の振り返って左を向いている個体がそれです。


観察データ

場所と回数:宮城県登米市 2、計2回。割と全国各地で出現記録はあるようですが、それらは皆迷い鳥のレベルなため、高い確率で見たいと思うとやはり宮城県の登米市に行くのがベストかと思います。ただし、伊豆沼近辺に来るマガンが10万羽オーバーに対して、カリガネは300羽程度です。マガンを1,000羽撮ってカリガネが3羽混じるレベル。これを探し出すのは本当に難しい。。。私は毎年のように登米市の田んぼ巡りをして、毎回ざっと500~1,000羽くらいのマガンを撮って帰っていたと思いますが、カリガネを撮れたのは2/5回。そのうち1回はぼやぼやの絵でもしかしたらカリガネではないかもしれませんので、1,000羽見たからといって必ず撮れるとは限らない、実際はもっとレアで見るのが難しい鳥と感じています。

観察月と回数:

1月0
2月0
3月0
4月0
5月0
6月0
7月0
8月0
9月0
10月0
11月0
12月2 〇〇
都合2回
冬鳥です。11月~2月くらいまでがよいようです。



 (トップ画像 カリガネ 2021/12/16 D500 500mm/F4 宮城県登米市にて撮影)

 初出:2021/12/18
 改定:2022/05/15 文章の見直し