シロチドリ 白千鳥
Shirochidori
Charadrius alexandrinus
Kentish plover

シロチドリ チドリ目チドリ科 絶滅危惧II種 VU

干潟の韋駄天
 斜めに走る 小型のチドリ


シロチドリについて



 私が昔(2015年まで)住んでいた広島県福山市のすぐ隣に、岡山県笠岡市という町があます。そこにある岡山県立 笠岡高校は校章に千鳥が描かれていて、通称「ちどり」と呼ばれています。(お笑いタレント「千鳥」の名前の由来・・ただしお二人の出身校でありませんが)
 私がよく鳥見に通っていた笠岡干拓は、昭和の途中までは大きな干潟のある内湾でした。しかし大規模な干拓地となって、今の笠岡湾は細長い小さな湾になってしまいました。それでも周囲にはまだわずかに干潟が残っていて、太古から生き続けるカブトガニの生息地として天然記念物指定もされています。少ないながらシロチドリも見られます。また福山市内にあってよく通わせてもらった干潟でも毎年シロチドリが見られ、当時の私にとって、「シロチドリ」は一番親しみのあるチドリ科の鳥でした。

 関東地域では、海岸線は広くてもほとんどが埋め立て地ですから、シロチドリを見られる場所はそうそう見つかりません。国内レッドリストでもVU指定となっており、東京湾の一部干潟や九十九里浜の一部砂浜で見られる程度です。干潟と共に生きる鳥なので、なんとかわずかに残された干潟を皆で守っていきたいものです。






「福山のシロチドリ」 クリックで拡大します。

福山のシロチドリ

広島県福山市
1024x682 px
2014/12/07
Nikon D200 Mode A
Tamron A011 150-600mm / F5.6-6.3

 時期は真冬ですが、何故か夏羽っぽい姿のシロチドリです。おそらく ♂ なのではと思われます。場所は福山市の小さな干潟です。
 ここは瀬戸内海の中央部のため、大潮時の干満は最大5mにも達します。その分干潟もできやすい。ただし、時間を間違えると干潟が広がって鳥が遠くなるため、近くで見られるチャンスは一時しかありません。逆に長潮だと潮が下がりきらず干潟が現れなかったりすることもあり、近くから見るのは結構難しいものでした。人口の多い内湾に位置するためお世辞にもきれいな泥地ではありませんが、鳥達にとっては富んだエサ場だったようです。




「千葉のシロチドリ」 クリックで拡大します。

千葉のシロチドリ

千葉県東京湾
1024x682 px
2020/12/26
Nikon D500 Mode A
Tamron A011 150-600mm / F5.6-6.3

 こちらは東京湾の干潟で撮ったシロチドリ。首筋にわずか夏羽風な橙色が残っている感じです。シロチドリの冬羽は基本的に ♂ ♀ 共に薄茶色と白色の地味な色めです。ただ冬でも夏羽っぽい色めをキープしている個体が一定数います。夏羽で橙混じりな派手な色となるのは ♂ なので、この個体も ♂ なのだろうと思われます。




「カニを捕るシロチドリ」 クリックで拡大します。

カニを捕るシロチドリ

千葉県東京湾
1024x682 px
2021/03/05
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR +
AF-S TC-14E III TC14E3

 一つ上の絵と同じ干潟でのシロチドリ。茶色一色な色め的に ♀ っぽい感じです。
 さて、足元がふらついた酔っぱらいの歩きは「千鳥足」と呼ばれます。その語源は鳥のチドリ類が足を交互に出して歩くことから、それをもじった言葉だといわれています。
 ネットで調べると「チドリは指が前側3本指で、少し安定感が悪いから足を交互にして歩く」と書かれている場合が多く見られました。しかし、シギ類のミユビシギも同じ3本指ですし、ハマシギの後ろの指もごく短く、実際に使われているようには見えませんので3本指と言って差し支えないと思います。実際、ハマシギの足跡を見ても3本指の足跡しか残っていません。しかしシギは皆斜め歩きをしません。ミユビシギも波打ち際で走りまくりますが、真っ直ぐ前を向いて走ります。
 ここからは観察に基づいた私的な考え方ですが、チドリはシギと違って、地上に見えた獲物を見つけてから、足で駆けて獲物に飛びつき、狩りをします。そして最大の好物はカニです。カニは御存知の通り、追いかけられたときに正面に向かって横方向に逃げます。「チドリが斜めに走ってカニを追いかけるのは、結果それが最短距離だから(生きるための必然)」というのが私の仮説(そんな大そうなものでもありませんが)です。一方、シギは主に水面下の砂や土の中に隠れる環形類や甲殻類をクチバシの触覚で探して捕まえるため、斜め歩きをする必要がありません。
 論文の調査など細かい下調べはしていませんが、私は以上から不規則に逃げる獲物を最短距離で狩るための交差歩きが、チドリ類の「千鳥足」を生んだものだと思っています。(生物学の論文を調べれば、このような話は生物の生存戦略としてたくさん出てくると思います)




「笠岡のシロチドリ 冬羽の小群れ」 クリックで拡大します。

笠岡のシロチドリ 冬羽の小群れ

岡山県笠岡市
1024x682 px
2014/11/02
Nikon D200 Mode A
Tamron A011 150-600mm / F5.6-6.3

 笠岡の海岸沿いで見つけた冬羽をしたシロチドリの小群れです。満潮のときはこのように岩の上や防波堤の上に集まって休んでいるのをよく見かけます。




「シロチドリ 翼」 クリックで拡大します。

シロチドリ 翼

岡山県笠岡市
1024x682 px
2014/11/02
Nikon D200 Mode A
Tamron A011 150-600mm / F5.6-6.3

 シロチドリが翼を広げたところです。茶色をした表面に白い翼帯が一本見えます。飛ぶとこれが良く目立ちます。ちなみに、シロチドリの飛んだ姿はハマシギのそれととても良く似ているため、一緒に飛ばれると完全に同化してしまいます。



「シロチドリ 飛翔」 クリックで拡大します。

シロチドリ 飛翔

千葉県東京湾
1024x682 px
2021/03/05
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR

 シロチドリは、飛んだ時に下から見上げるとほぼ真っ白に見えます。
 翼が大きいので、飛ぶと体のサイズ以上に大きく見えますね。






観察データ

場所と回数:佐賀県 有明海 1、福山市 6、笠岡市 3、浜名湖 1、千葉県 東京湾 12、千葉県九十九里浜 4、宮城県の干潟 1、計28回。干潟もしくは砂浜で見ています。よく似たコチドリは内陸の田んぼで見ることが多いですが、これまでシロチドリは海専門で出会っています。

観察月と回数:
1月 6 〇〇〇〇〇〇
2月 1 〇
3月 1 〇
4月 3 〇〇〇
5月 0
6月 1 〇
7月 0
8月 1 〇
9月 1 〇
10月 5 〇〇〇〇〇
11月 4 〇〇〇〇
12月 5 〇〇〇〇〇
計28回

本州では留鳥もしくは漂鳥。東北では夏鳥。とはいえ、やはり見やすいのは秋から冬です。




(トップ画像 ダッシュするシロチドリ 2015/11/01 D7100 150-600mm / F5.6-6.3 ズーム 千葉県東京湾

 初出:2014/12/11
 改訂:2015/11/01
 改訂:2021/08/23チドリ科へのリンクを追加、観察データを追加
 改訂:2025/09/12 全面作り直し