ムナグロ 胸黒
Munaguro
Pluvialis fulva
Pacific Golden Plover/Kolea

ムナグロ チドリ目チドリ科

金色のハート模様がチャームポイント
春に日本の田んぼを訪れる やや大型のチドリ


ムナグロについて



 ムナグロは名前の通り胸が真っ黒になるやや大型のチドリです。
 チドリ類は概して小型の鳥だという印象があります。ムナグロもチドリの仲間ですが、例えばコチドリやシロチドリなどと比べればおよそ倍近いサイズで大型と言えます。ただし近縁のダイゼンに至ってはムナグロより更に一回り大きいため、ムナグロについてはとりあえず「やや大型」と表現させてもらいました。ちなみにダイゼンも渡り鳥ですが、日本では冬の干潟に居ついたりするので、ムナグロよりはずっとポピュラーな種です。逆に言えばムナグロは観察することが結構難しい部類に入ると思います。
 ムナグロ自体、国内に広く飛来すると言われていますが、私は未だ自分のホームグラウンド(今の横浜や昔の福山)周辺でムナグロを観察できた試しがありません。実際、これから紹介する記録はハワイのオアフ島や八重山諸島で記録したものとなります。
 春に近所で鳥見をしていたときのこと、「このあいだ、すぐ近くの畑にムナグロが来ていたよ」という話を聞かされたことがあります。なのでムナグロ自体は離島へ遠征しないと見れないような難しい種ではなさそうです。一方で日本(特に本州)は渡りの経由地であって、飛来してもすぐに飛び立ってしまうために、出会いには少しの運が必要となります。(私には今のところ運がない。。)もちろん過去に飛来記録があるようなポイントに、時期をみて足繁く通っていれば、出会いの確率はずっと高まるだろうと思います。まだムナグロを未見の方はこれから過去情報を調べたりして、来春の訪れを待ってみてはいかがでしょうか。






「海辺のムナグロ 夏羽」 クリックで拡大します。

海辺のムナグロ 夏羽

ハワイ州オアフ島
1024x682 px
2019/04/15
Nikon D500 Mode A
Tamron A011 150-600mm / F5.6-6.3

 オアフ島の東海岸の公園で休憩していたときに岸辺に佇んでいたムナグロ。ハワイ諸島はムナグロの越冬地となります。8月過ぎにアラスカやシベリア方面からやってきて冬を越し、4月頃からは繁殖のためにまた北に戻ることを繰り返すそうです。ただ、一度に数千Kmの海を渡るために、多くの若鳥は最初の渡りで命を落とすのだとか。ちなみに親は先に渡って、若鳥はあとから自力で島を目指します。そうまでして(危険を冒してまで)見えない南の島へ飛ぼうとする理由や、そもそも各島への飛行路が何故わかるのか?などは、未だ謎なのだそうです。




「芝生の上のムナグロ 夏羽」 クリックで拡大します。

芝生の上のムナグロ 夏羽 1

芝生の上のムナグロ 夏羽 2

ハワイ州オアフ島
1024x682 px
2019/04/13-14
Nikon D500 Mode A
Tamron A011 150-600mm / F5.6-6.3

 図鑑によるとムナグロはダイゼンに比べて乾いた地面を好む傾向があるそうです。私はオアフ滞在中にあちこちでムナグロを見つけましたが、大半は公園の芝生の上でした。ちなみにムナグロを見かける確率としては、日本でハトを見るのと同じくらいにどこにでもいる風でしたし、個体にもよりますが結構近づいても逃げないものもいました。10m以内に近づくのは余裕な感じでかなりフレンドリーな鳥という印象です。(ハワイの地域性もあるのかもしれません)




「八重山諸島のムナグロ 冬羽」 クリックで拡大します。

八重山諸島のムナグロ 冬羽

沖縄県八重山諸島
1024x682 px
2025/03/13
Nikon Z6II Mode A
AF-S NIKKOR Z 400mm f/4.5 VR S +
Z TELECONVERTER TC-1.4x

 2025年3月に八重山諸島へ行きました。到着初日にホテルに入るまで少し時間があったため、近場の海岸に寄ってみました。そこには広い磯場があって、キョウジョシギ、キアシシギ、クロサギなどと一緒にムナグロの姿も見えました。
 八重山諸島は日本最南端の地の一つでもあり、ムナグロの越冬地となっているそうです。3月はまだ渡り前の時期なので、姿も冬羽の装いでした。
 ダイゼンとの違いはやはり全体的に黄色みが強いことでしょうか。両者にはサイズ差があるのですが、単体相手の観察となれば、サイズ感を元にした判別は難しくなります。しかしこのときは現場で色目を見ただけで「これ絶対ムナグロじゃん」と自信をもって判断することができました。この判断も、日頃からダイゼンをたくさん観察していたおかげかと思います。やはりいくら見慣れた種であっても「「また〇〇かー!」とか言わずにきちんと観察し続けておけば、いざというときに役に立つことがあるもんだ」ととても勉強になりました。







観察データ

場所と回数:八重山諸島 1、オアフ島 5、計6回。八重山諸島では磯場で観察しました。オアフは4日の滞在で毎日色々な場所で観察していました。こちらでは環境的に公園の芝生で見る回数が一番多かったと思います。

観察月と回数:
1月0
2月0
3月1 〇
4月5 〇〇〇〇〇
5月0
6月0
7月0
8月0
9月0
10月0
11月0
12月0
計6回

本州では旅鳥。南の島では一部越冬地になっています。ハワイ諸島は越冬地で8月頃から翌4月頃まで見られるそうです。オアフの記録は4月中旬でしたが、いずれもほぼ夏羽姿になっていました。




(トップ画像 ムナグロの背中 2019/04/15 D500 + 150-600mm zoom F5.6-6.3 オアフ等 / 背中に散りばめられた金色のハートマークがとてもチャーミングですね)

 初出:2019/04/25
 改訂:2021/08/30 チドリ科へのリンクを追加、観察データを更新
全面改訂:2025/06/01 全面書き直し