Sakanaya's Graphic Works 福山市の野鳥、自然を写す
Japanese Wild Birds in Fukuyama
Japanese Wild Birds in Fukuyama
ズグロカモメ 頭黒鴎
Zugurokamome
Larus saundersi
Saunders's gull
ズグロカモメ チドリ目カモメ科 絶滅危惧Ⅱ類 VU
主に九州で見られる干潟のカモメ
主に九州で見られる干潟のカモメ
ズグロカモメについて
ズグロカモメはカモメ類では珍しい干潟のカモメです。日本では冬鳥なので、主に見られるのは冬羽の姿となり、ぱっと見でよく似たユリカモメと混同しがちになります。サイズ的にもユリカモメと同程度で、ユリカモメの群れに混じっていた場合などは、現場で気づくのはかなり難しいのではないかと思います。
私のズグロカモメとの出会いは九州の有明海の干潟へ出かけたときのことでした。年末に九州を一周したとき、有明海の広大な干潟に立ち寄りました。周囲を見渡して確認できたのは多数のツクシガモと、少数のダイシャクシギ、そして数羽のユリカモメ。。ただ自分の知るユリカモメはいつもそれなりの群れで見かけましたし、レンズを通してみる姿にもどことなく違和感があります。「これユリカモメではないのかも?」と思って、できるだけ写真記録を残しておきました。
家で図鑑と見比べてみた結果、現場で違和感を感じた通り、このカモメはユリカモメではなくズグロカモメという干潟のカモメだとわかりました。確かに干潟をヨチヨチと歩いて餌を探していたので、カモメ観察の初心者だった自分は「変わったカモメもいるもんだ」と不思議に思った記憶があります。
以後、ズグロカモメは瀬戸内の福山や東京湾の千葉県内でも少数ながら観察を続けられています。私的には、観察数こそ多くはありませんが、滅多に見られないというほどでもない印象です。ただ国内では激減している干潟に飛来する鳥であるため、絶滅危惧II類に指定されている事実もあります。これからも、日本に残された干潟をなんとか守って行きたいものです。
「ズグロカモメ 有明海 冬羽」 クリックで拡大します。


佐賀県佐賀市
1024x682 px
2014/12/30
Nikon D7100 Mode A
Tamron A011 150-600mm / F5.6-6.3
初めて出会った有明海での記録。
1枚目:干潟を歩いているユリカモメはあまり見ません。千葉の干潟ではユリカモメも見ますが、もっと水際で見ることがほとんどで、泥の上をいつまでもヨチヨチ歩きすることはまずありません。あとはクチバシが黒くて短いため、顔の印象もユリカモメとは差があります。
2枚目:飛翔中のズグロカモメ。干潟でカニなどのエサを探すために、干潟の上を割と低空で舐めるように飛んでいました。いつ急に頭上に(しかも近距離で)現れるかわからないので、ズグロカモメがいるときは手持ちできるカメラレンズを用意しておくのがよいですね。
先に「ズグロカモメはヨチヨチ歩く」と書きましたが、干潟でカニを捕る鳥だからといって、シギチのようにシュンシュン走り回れるわけではありません。基本的には干潟の上空を飛びながら獲物を探し、見つけたところで急降下して捕食します。
「福山のズグロカモメ」 クリックで拡大します。


広島県福山市
1024x682 px
2015/03/15
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR
福山時代、「福山にもズグロカモメが来ている」という話を鳥見の人から聞いたことがありました。ただ私自身は見つけられないまま横浜に引っ越してしまい、出会いは幻となってしまいました。
ところがそれから5年程経って、自身の記録を一から見直し作業をしているときに、福山で撮ったユリカモメの群れの中に一羽のズグロカモメを発見してしまうことに。。
他のユリカモメと比べて。
1:クチバシが黒くて短い これが一番わかりやすい
2:足が赤黒い 光の当たり方が弱いと黒く見える感じ
3:頭の上から降りてくる2本のラインが太い
しっかり見れば違いは明らかですね。単に注意力(というか見つけてやろうという気概?)がなかっただけかと。当時の自分の目の節穴さに反省
(もうお分かりかと思いますが、2枚目のアップ絵、中央の個体がズグロカモメです)
(ちなみに、この見直し作業の際、初めてズグロカモメを見たと思っていた日の前日に寄っていた鹿児島のツル観察センター近くの記録にも、飛んでいるズグロカモメの姿が写っていました。なので私の本当の初見は有明海のものではなく、出水市の田んぼ上空だったということになります。重ねてお粗末。。)
「東京湾のズグロカモメ 冬羽、飛翔」 クリックで拡大します。



千葉県東京湾
1024x682 px
2022/01/03
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR
1枚目:東京湾の干潟に佇む冬のズグロカモメ。ここでもやはり水際ではなく、干潟の上に立っています。ちなみに手前にいるのはハマシギです。この絵からもシギチと同じ土俵にいるカモメという感じですね。
2枚目、3枚目:ズグロカモメが飛び立つ瞬間及び飛翔絵です。ズグロカモメは実はユリカモメより更に翼が長いです。獲物探しに干潟の上で滞空している時間が長いためでしょうか。
「ズグロカモメ 冬羽 一年生」 クリックで拡大します。

千葉県東京湾
1024x682 px
2022/01/03
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR
こちらは一つ上の絵を撮った場所とは別の干潟で見つけたズグロカモメの第一回冬羽です。翼に茶色の斑が残っているあたりは、ユリカモメの若鳥とよく似ています。
「ズグロカモメ 夏羽 」 クリックで拡大します。


千葉県東京湾
1024x682 px
2021/03/05
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR
1枚目:夏羽に換羽中のズグロカモメ。ちなみに1年生の夏羽もこのようなまだら模様の頭になるそうですが、この絵を見る限り、尾羽の黒帯もなく、翼の茶色班も残っていないので、おそらく成鳥が換羽中の姿であろうと思われます。
2枚目:完全に頭が黒化した成鳥夏羽です。ユリカモメとの違いは、頭の黒頭巾が首まですっぽりとかかるところ。ユリカモメの方は黒頭巾が頭頂あたりまでで止まり、後頭部から首にかけては白いままです。
「ズグロカモメ 富士山をバックに」 クリックで拡大します。

千葉県東京湾
1024x682 px
2022/01/03
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR
大阪で生まれ育ち、その後長く広島県で暮らしていた私にとって、富士山は見える度に感動させられる存在です。そこに飛ぶ鳥が被ろうものなら狙わないわけにはいきません。言ってしまえばそれだけの絵です。。まあ記念写真ですね。
観察データ
場所と回数:鹿児島県の田畑上空 1、有明海 1、瀬戸内 1、東京湾 6、計9回。西日本の干潟に多い冬のカモメです。自分の記録を見る限り、2020年以降、関東の干潟でも少数の飛来が続いていると思われます。
瀬戸内ではユリカモメの群れに混じっていました。それ以外では単独もしくは少数で見ることが多いので、干潟に単独でいるユリカモメ風の小型のカモメを見かけたら、是非クチバシに注目して、「ズグロカモメでないのか?」と確認してみましょう。
観察月と回数:
1月4 〇〇〇〇
2月1 〇
3月3 〇〇
4月0
5月0
6月0
7月0
8月0
9月0
10月0
11月0
12月2 〇〇
計9回
冬鳥です。自分の記録では12月29日~3月15日の間で見ています。3月になれば黒頭巾姿を観察できるチャンスがあります。
お詫び:今回このページを全面改訂する以前、トップ絵で「ズグロカモメのものと思われる羽根」として一枚の羽根を紹介させてもらっていました。現場で拾った羽根は一目見てカモメ類のものとわかるもので、当日周囲に見られたカモメ類がズグロカモメのみだったので、そうだろうと思って紹介させてもらっていました。
しかし今回あらためて見ましたところ、ズグロカモメの羽根より明らかに大きいサイズであることがわかりました。形状的には二次風切りだと思われますが、サイズ的にはセグロカモメやワシカモメに近いものでしたので、今回は削除させていただきました。謹んでお詫びいたします。
(トップ画像 ズグロカモメ 2014/12/30 D7100 150-600mm f5.6-6.3 佐賀県佐賀市)
初出:2015/01/12
改定:2021/03/07 文章の校正、福山と三番瀬の静止画を追加、観察データの追加
全面改訂:2025/05/31 全面書き直し