メリケンキアシシギ メリケン黄足鷸
Meriken_kiashishigi
Tringa incanus
Wandering Tattler

メリケンキアシシギ チドリ目シギ科
名前の通りアメリカンな
 ときどき日本でも見られるらしいキアシシギ


メリケンキアシシギについて



 図鑑によれば、メリケンキアシシギはアラスカで繁殖し、アメリカからメキシコのいわゆる米大陸西海岸沿い、太平洋の中央から東側の島々を移動する渡り鳥だそうです。日本への飛来(迷い鳥)もあり、小笠原辺りでは比較的頻度が上がるそうですが、本州でもたまに迷ってやってくるとのこと。姿かたちは日本のキアシシギにそっくりで、初見でその差に気づくのは難しいと思われるレベルの似方です。
 私は息子の結婚式でハワイ・オアフ島へ出かけた際に観察する機会がありました。フリーの日にレンタカーを借りて島の東半分を一周した際、休憩に寄った東側の海岸(小さな公園)で見つけました。当日は強風で、カメラレンズが風に持っていかれる悪条件でしたが、しゃがんで脇を締めてなんとか静止画を残すことができました。(動画はぶれぶれに終わりました)
 メリケンキアシシギはハワイ諸島では迷い鳥でなく現地で定期的に見られる渡り鳥です。ハワイの図鑑には現地名も載っていて"ULILI"と呼ばれているそうです。「「トゥリリ!Too-Li-Li-Li!」と鳴くので現地名がそう付けられた」みたいなことが書かれています。「ヒヨと鳴くからヒヨドリ」みたいなものかと。。(所説ありますが)






「メリケンキアシシギ」 クリックで拡大します。

メリケンキアシシギ

ハワイ州オアフ島
1024x682 px
2019/04/15
Nikon D500 Mode A
Tamron A011 150-600mm / F5.6-6.3


 後ろ姿から振り返ってくれたメリケンキアシシギ。雌雄同色のため、性別は不明です。季節的には夏羽なのではと思います。
 背中の色がきれいなグレーで、国内のキアシシギよりやや暗い印象が感じられます。模様が全く見えないのも特徴でしょうか。キアシシギは遠目に見たとき、翼あたりがもう少し茶色混じりに見えると思いますので、この差が一番大きいのかと感じています。。
 



「メリケンキアシシギ アップ姿」 クリックで拡大します。

メリケンキアシシギ アップ姿

ハワイ州オアフ島
1024x682 px
2019/04/15
Nikon D500 Mode A
Tamron A011 150-600mm / F5.6-6.3


 絵を少しアップにトリミングしてみました。メリケンキアシシギとキアシシギの差の一つとして、クチバシの鼻腔の前方にある延長溝の長さに違いがあると言われています。メリケンキアシシギはクチバシ全体の2/3くらいでキアシシギは1/2くらいだとのこと。絵を見る限りでは確かに半分よりは長く思えますが、先端に近づくほど溝が浅くなっているため、光の加減で見えたり見えなかったりします。現場で判別に使うには中々難しいところもあるかな?という感じです。
 メリケンキアシシギは砂浜より岩礁を好む傾向があるそうです。この日も海辺の岩をウロウロして餌となるカニを探していました。
 



「メリケンキアシシギ エサ捕り中」 クリックで拡大します。

メリケンキアシシギ アップ姿

ハワイ州オアフ島
1024x682 px
2019/04/15
Nikon D500 Mode A
Tamron A011 150-600mm / F5.6-6.3


 カニを捕まえて、首を振って足をちぎっているところです。足がなくなったところで一飲みにしていました。カニはカロリーが低いのできっとたくさん食べるのでしょうね。
 



「メリケンキアシシギだったかもしれない疑惑のキアシシギ」 クリックで拡大します。

メリケンキアシシギだったかもしれない疑惑のキアシシギ

メリケンキアシシギだったかもしれない疑惑のキアシシギ アップ

広島県福山市
1024x682 px
2014/09/06
Nikon D200 Mode A
Tamron A011 150-600mm / F5.6-6.3


 以下は私の福山時代の話です。野鳥観察は2005年前後くらいから始めておりますが、最初は身近な小鳥観察から始めていまして、近くの山や川での観察が主でした。やがて鳥への興味も深まってきた2013年頃からは、瀬戸内海方面にも出かけるようになり、自然とシギチ探索も始めるようになりました。初めてシギチを見たのがキアシシギだったこともあり、キアシシギは私にとっても思い入れ深いシギであります。こうして以後2015年の関東へ転居するまでの3年間は、春からGW頃に渡り途中のキアシシギを欠かさず記録していました。
 毎年、初夏に見るキアシシギは皆胸から脇あたりにかけて波模様があって、夏羽の装いです。ところが2014年9月に一度だけ秋の渡りの個体を撮影していました。こちらは既に冬羽の姿をしていました。というか、細かくみるとまだ幼鳥の羽色の特徴が残っている若鳥だったようです。このときは干潟ではなく、湾に浮べられた丸太の上でうろうろしていました。で、このキアシシギは私自身初めて見た冬羽だったので、なんの疑問も持たず、初めてみた冬羽のキアシシギとしてキアシシギのページでアップ絵を紹介しておりました。
 しかしオアフのメリケンキアシシギを紹介するためにこの鳥の特徴を調べるうち、まず灰色が濃いということで、福山のキアシシギの見た目に長年抱いていた違和感をふと思い出しました。春のキアシシギの背中は茶系が強いのにこの秋のキアシシギは濃い目のモノトーンです。またメリケンキアシシギの翼先端は尾羽より長くはみ出て見えるそうですが、こちらの絵を見た感じもそのように見えます。それと秋のキアシシギはクチバシの艶がやけに印象的でした。これは若鳥であることもあるかもしれません。
 またこの個体はクチバシ全体が黒っぽい色合いなことがその違和感を強くしていました。キアシシギのクチバシは特に下側の付け根あたりが黄色っぽくて薄い色をしています。もう一点、メリケンキアシシギは鼻腔先の溝がクチバシの2/3程度とキアシシギ(1/2)より長いと図鑑にあります。アップで見ると確かにこの点でも一致していて、半分より長いように見えます。



「疑惑のキアシシギ ペア」 クリックで拡大します。

疑惑のキアシシギ ペア

茨城県稲敷市
1024x682 px
2021/04/30
Nikon D7100 Mode A
Tamron A011 150-600mm / F5.6-6.3


 このメリケン風なキアシシギは当日2羽いました。どちらも同じ姿をしています。となるとペアだったのでしょうか。迷い鳥ってペアで来ることは少ないような気もします。またこの絵を見ると、翼には少し茶色系が混じっているように見えます。やはりふつうのキアシシギ冬羽だったのだろうか。。自分自身冬羽のキアシシギはほとんど観察記録がない(このとき含めて2回だけ)なため全く持って自信がありません。
 というわけで、結局のところこの二羽がキアシシギなのかメリケンキアシシギなのかは今も判断できていません。もう少し冬羽のキアシシギの観察を重ねないと同定は難しいのかなと思っています。
 




観察データ

場所と回数:オアフ島1。東海岸ハウウラ近辺。砂浜にある岩場にいました。

観察月と回数:
1月0
2月0
3月0
4月1 〇
5月0
6月0
7月0
8月0
9月0
10月0
11月0
12月0
計7回

ハワイの図鑑で見ると夏に来て4~5月にアラスカへ渡るとのことです。でもここは常夏の国なので、どういう感覚でハワイに来たり他所へ去ったりするのでしょうか。ちなみに繁殖しないうちの若鳥は一年中ハワイにいるそうです。集団で渡るのでしょうけど、練習もなく、いきなり数千Kmも離れたアラスカまで飛ぶというのは凄いよなと驚かされます。




(トップ画像 メリケンキアシシギ 2019/04/15 D500+150-600mmzoom F5.6-6.3 オアフ)

 初出:2019/08/25
全面改訂:2025/05/22 全面書き直し