ウチヤマセンニュウ 内山仙入
Uchiyamasennyu
Locustella pleskei
Styan's grasshopper-warbler

ウチヤマセンニュウ スズメ目センニュウ科 絶滅危惧ⅠB類 EN
 海沿いの草原で歌う
 オオヨシキリ風の姿をした小鳥

   



ウチヤマセンニュウについて

 ウチヤマセンニュウは島嶼部や一部沿岸の草地に営巣にやってくる夏鳥です。有名な観察場所は三宅島で、私もこの島へ渡って観察をしました。
 この地味な小鳥は鳥の中でも珍しい繁殖環境を持っていて、海に近い草原を繁殖地とするそうです。無防備な場所で営巣するので、外敵のいない小さめの島でしか繁殖しない(できない)とのこと。仲間のオオセッカ(後述)などのように湿地の葦原であればまだ本土でも繁殖可能な場所が残されていますが、ただの草原で繁殖するにはタヌキやイタチなどの捕食者がいない孤立した島や場所であることが条件になるようです。





「ウチヤマセンニュウ さえずりの姿 1、2」 クリックで拡大します。

ウチヤマセンニュウ さえずりの姿 1


ウチヤマセンニュウ さえずりの姿 2

東京都三宅島
1024×682 px
2021/05/15,16
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR


 さえずりの絵その1:
 さて、このウチヤマセンニュウですが、姿もサイズもおよそオオヨシキリな感じです。あらためて図鑑でウチヤマセンニュウに近い種を探してみると、私の見てきた種では、オオセッカがセンニュウ科で一番近い種となりました。先に「姿はおよそオオヨシキリ」と言いましたが、さえずりの方は確かに同じ科のオオセッカとよく似ています。またオオセッカは空に向かってぐるりと大きな輪を描いて飛びながらさえずりをするわけですが、このウチヤマセンニュウも同じように草原から飛び出しつつさえずりを行います。一方、オオヨシキリはそのような行動はしません。ですので、ウチヤマセンニュウを探すときはオオセッカ探しと同じように、「繁殖期に観察に出かけ、草原から飛び出しするところを見つける」のがポイントとなります。しかし観察はできても撮影は簡単ではありません。
 1.飛び出ししても、あっという間に降下して草原に飛び込んでしまう。
 2.いつ飛び出すかわからないので、いざ出てきたときにレンズを振ってもなかなか飛翔に追いつかない。レンズで追いやすいようにしようと思うと、少し距離をおくことになり、写りが米粒になる。
 3.草藪の中で鳴いているのは分かっても、まず草藪から姿を現すことはない。見えても当たり前ながら枝被り、草被りばかり。
 ここから先は我慢と運です。私の場合は陽が暮れるぎりぎりまで粘って、奇跡的に近くに姿を見せてくれた個体と出会うことができました。
 
 さえずりの絵その2:
 1枚目の絵は島に着いた当日夕方の記録でした。翌朝夜明け頃を狙ってもう一度同じ場所に出かけてみましたところ、昨日とは打って変わってさえずりが四方から聞こえてきて、とてもにぎやかです。姿を見かけたあたりでじっと座って待っていたところ、やがて枝の上に出てきてさえずりしてくれる個体と出会うことができました。



「ウチヤマセンニュウ 飛翔」 クリックで拡大します。

ウチヤマセンニュウ 飛翔

東京都三宅島
1024×682 px
2021/05/15,16
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR


 毎度の飛翔絵ならぬ飛び出し絵です。見た目はやはりオオヨシキリみたいな感じです。ページトップの絵を見てもらうと分かりやすいですが、藪の中を潜って移動する鳥なため、通行の邪魔にならないように風切り羽が短いです。この手の羽姿をしている鳥は短距離をささっと移動するタイプが多いですね。



「ウチヤマセンニュウ 藪の中」 クリックで拡大します。

ウチヤマセンニュウ 藪の中

東京都三宅島
1024×682 px
2021/05/15,16
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR


 こちらの絵は「人にお見せする絵としてはどうよ?」という代物ですが、実情をお見せするのには丁度良いので紹介させていただくこととしました。
 ウチヤマセンニュウは繁殖地(草っぱら)を探してそこに行けば、昼間でも声はそれなりに聞こえてきます。ただ、声はすれども姿はさっぱり見えません。ウグイスみたいなものですね。とはいえ、せっかく三宅島まで来たのですから、何としてもウチヤマセンニュウの姿を一目見たい!と思うのは人情というものです。で、一生懸命藪の中を探してやっと姿を発見!というのがこの絵の場面です。



観察データ

場所と回数:東京都三宅島 2、計2回。繁殖のために島嶼にしか飛来しない鳥なため、観察するにはそこまで行くしかありません。九州、近畿、伊豆諸島などの限られた島に飛来しているようです。なお三宅島で観察する場合ですが、場所を知らない初見の方は、初日は先に場所の当たりを付けておき、一泊して翌日出向前の早朝(できれば夜明けと同時の頃)に本番チャレンジする行程をお勧めします。宿の朝食の前にレンタカーでひとっ走りして、ささっと撮って朝食に戻る感じですね。到着当日は他にもたくさん見たい種がいるはずなので、ウチヤマセンニュウにこだわってしまって、出の悪い(午後の)時間に頑張るのは(特に三宅島初回の場合は)時間がもったいないと思います。

観察月と回数:

1月0
2月0
3月0
4月0
5月2 〇〇
6月0
7月0
8月0
9月0
10月0
11月0
12月0
計2回

 夏鳥なので4月後半~6月くらいがよいようです。

 
 (トップ画像 ウチヤマセンニュウ 2021/05/16 D500 500mm/F4.0 東京都三宅島)
 
 初出:2022/01/22
 全面改訂:2024/03/30
 改訂:2024/04/25 文章の見直し
 改訂:2024/12/24 文章の見直し