ルリビタキ 瑠璃鶲
Ruribitaki
Tarsiger cyanurus
Red-flanked bluetail

ジョウビタキ スズメ目ヒタキ科
冬の林にやってくる 瑠璃色の宝石

   

ルリビタキについて
   
 ルリビタキは私が野鳥撮影にハマるきっかけとなった美しい小鳥です。名前についた「ルリ」という言葉についてですが、野鳥で「アオ」は緑色を指すことがおおく、青色(Blue)をした鳥は「瑠璃・ルリ」が頭につく形となります。
 ルリビタキが瑠璃色をしているのは ♂ だけです。♀ はオリーブ色をしていて地味です。。と、福山でさんざんルリビタキを見ていた私はそう信じておりました。おそらく周囲の方の認識も皆同じだったと思います。
 関東に来て2,000m級の山に登れば、繁殖中のルリビタキを観察することができます。そこで初めてわかったのは、「ルリビタキの ♀ の姿をした個体がさえずっている!」ということでした。さえずるのは ♂ のお仕事です。自分の常識が覆されたため図鑑などで調べてみると、ルリビタキ ♂ が名前の通りに「瑠璃色」の姿になるには4年かかるのだと知りました。彼らには2年も経つと既に繁殖能力があるので、♀ に似た姿をしている立派な ♂ のルリビタキもいるわけです。
 あらためて 「これはさすがに ♀ だろう」という記録を探してみましたが、どれも決め手はありません。かくしてルリビタキの雌雄認識はかなり厄介なこととなってしまいました。知らない方が幸せだったかもしれません。
 脇のオレンジ色をした羽毛が目立つほどボリューミーな個体はどうやら ♂ で間違いなさそうです。それ以外の地味目な個体は「たぶん ♀ でないの?」くらいでしか捉えようがないなと感じています。




「横浜のルリビタキ ♂」 クリックで拡大します。

横浜のルリビタキ ♂

神奈川県横浜市
1024×682 px
2020/12/19
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR

 地元の公園で撮った冬のルリビタキの ♂ 。このときのように、散歩がてらの鳥見でこのように「幸せを呼ぶ青い鳥」と出会えたら、それは贅沢な時間ですね。
 



「福山のルリビタキ ♂」 クリックで拡大します。

福山のルリビタキ ♂

広島県福山市
1024×682 px
2013/02/23
Nikon DV1 Mode A
Nion AiAF ED 300mm/F4s

 福山時代の記録です。この個体はとても人馴れしていてかなり近くから観察することができました。今考えると、誰かがエサを与えていたのかもしれません。逆に言えばルリビタキはそれほど人を魅了する美しさを持った小鳥なのだろうと思います。



「八ヶ岳のルリビタキ ♂ 春の成鳥」 クリックで拡大します。

八ヶ岳のルリビタキ ♂ 春の成鳥

長野県南佐久郡
1024×682 px
2018/04/22
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR

 八ヶ岳の標高2,000mを超える高山で撮った晩春のルリビタキです。背景が白っぽく見えるのは残雪です。当日は私の方も深い雪で足元が取られるような環境でしたが、それでもルリビタキがこのような美しい姿をしていたのは、丁度恋の季節が始まるときだったからのでしょうね。



「八ヶ岳のルリビタキ ♂ 夏の若鳥」 クリックで拡大します。

八ヶ岳のルリビタキ ♂ 夏の若鳥

長野県北佐久郡
1024×682 px
2018/04/22
Nikon D500 Mode A
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR

 こちらは青くないルリビタキ ♂ です。エサの虫をたくさん加えていて、繁殖はしているようでしたから2年生~3年生の間くらいでしょうか。



「上高地のルリビタキ ♂ 初夏の若鳥」 クリックで拡大します。

上高地のルリビタキ ♂ 初夏の若鳥

長野県松本市
1024×682 px
2018/04/22
Nikon D500 Mode A
Tamron A011 150-600mm / F5.6-6.3

 この個体は脇のオレンジ色をした羽毛がとてもボリューミーなので、「♀ っぽい色をしているけれど実は ♂ だ!」ととてもわかりやすいですね。



「神奈川のルリビタキ ♀ 冬」 クリックで拡大します。

ルリビタキ ♀ 冬

神奈川県相模原市
1024×682 px
2016/12/31
Nikon D500 Mode A
Tamron A011 150-600mm / F5.6-6.3

 脇の羽毛が全体的に薄いのでおそらく ♀ のるり子さんなのだろうと思われます。



「福山のルリビタキ ♀ 冬」 クリックで拡大します。

福山のルリビタキ ♀ 冬

広島県福山市
1024×682 px
2010/01/04
Nikon D200 Mode A
Nion AiAF ED 300mm/F4s

 福山のホームグラウンドの公園で撮った思い出の写真です。とにかくファインダーから見える姿が可愛かった。なので当時から ♀ だと信じ切っていました。
 最近になって青くない ♂ の存在を知ってからは「実際のところどうなんだろう?」と今一度色々チェックしてみましたが、決定的な証拠はありません。やや脇の羽毛がボリューミーですが、肩から翼にかけて青みがなく、尾羽の青色も渋めなのでやはり ♀ の成鳥なのではと思っています。

 D200にオールドサンヨンで撮ったにしてはまずまずきれいに可愛く撮れていて、今もお気に入りの一枚です。





観察データ

場所と回数:広島県46、岡山県3、長野県4、富士山周辺5、神奈川県15、計72回。不思議と東北や北海道では一度も記録がありません。やや薄暗いくらいの山の中の森やその周辺の小道で「ヒッヒッヒ!」とよく通る地鳴きを耳にしながら探すのが良いと思います。青い ♂ 成鳥は中々藪の中から出てこない印象です。

観察月と回数:
1月22 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
2月12 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
3月6  〇〇〇〇〇〇
4月2  〇〇
5月2  〇〇
6月4  〇〇〇〇
7月0
8月0
9月0
10月0
11月4  〇〇〇〇
12月20 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
計72回
漂鳥です。本州中部以西では冬に比較的低山に降りて来ますので一番観察しやすい季節です。一方夏は1,500m級以上の亜高山に登らないと出会えませんので、本州中部以北あたりの方が観察しやすいと思います。特に夏場に富士山の五合目まで上がればそこかしこできれいなさえずりを聞くことができます。ちなみに低山でも11月の飛来当初であれば、ときおりさえずりを聞くことができます。是非「ルリビタキダヨ」の聞きなしで耳を傾けてみてください。




 新しいレンズを買って最初に鳥見に出かけた日、方々へ車を走らせては歩き廻ったもののあまり良い絵には巡り合えず、時間も夕刻近くなったので「もう本日終了」と店仕舞いすることとしました。レンズを抱えて駐車場へ向かって歩いていると、突然ルリ男君が私の目の前に現れました。少し日陰の場所だったこともあって、目視でも背中の青色が物凄く綺麗に輝いています。「これチャンス!」とレンズを向けておもむろに追いかけました。お陰様でいくつかアップのポーズが取れたのですが、中でも一番きれいな青色が撮れたのはこの羽ばたきの瞬間のややブレた絵でありました。「でもこれもありかなと」、トップに飾らしてもらうこととしました。ルリ男くん、まさに「瑠璃色の宝石」のような小鳥ですね。


 (トップ画像 ルリビタキ 2017/01/22 Nikon D500 500mm F4 + 1.4x 城山湖周辺にて撮影)

 初出:2014/10/13
 改訂:2016/06/12 夏のルリビタキ追加、動画の差し替え
 改訂:2017/01/22 トップ絵を差し替え
 改訂:2017/11/19 ♀静止画を差し替え
 改訂:2018/06/03 科をツグミからヒタキに変更
 改訂:2020/01/27 観察データを追加
 改訂:2021/08/04 ヒタキ科へのリンクを追加
 改訂:2024/03/29 全面改訂